山本公一環境相(69)は20日の記者会見で、刺されるとやけどのような痛みに襲われ、アナフィラキシーショックで死ぬこともある南米原産の「ヒアリ」が、神戸港のコンテナヤードから見つかったことを受け、地方自治体などと連携し侵入対策を急ぐ考えを示した。「水際で何とか防ぐ方策を講じたい」と述べた。

 また「ヒアリは小さく公園の芝生にいても見つけるのは難しい」と話し、国民に注意を呼び掛けた。日本全土への分布を懸念する声も高まっている。殺人アリに有効な対抗策はあるのか。

 兵庫県川西市のアリ駆除業者「トータルクリーン」の岩田喜充社長は「毒薬メーカーの試験結果では、一般的なクロアリ用の薬剤でも殺傷効果があるそうです。また、熱湯をかけても簡単に死にます」と話す。

 一方で、神戸市の別の業者は「まだ意見交換している段階で、本当に薬剤が効くのか分からない。セアカゴケグモと同じく、いつか日本に定着してしまうのでは」と懸念を隠さない。

 そんな中、外来種の昆虫との戦いにおける先輩は「初動が大事だ」と力説する。長崎県対馬市は、韓国から飛来したとみられる「ツマアカスズメバチ」の害に悩まされてきた。ツマアカは人間も刺すが、在来種のニホンミツバチを捕食したのだ。

 対馬市ニホンミツバチ部会の会長・扇次男氏は「2012年にツマアカが発見されてから爆発的に巣が増加した。対馬の『世界一』とうたわれるハチミツの生産量が9割減った養蜂家も出た」と苦しみの日々を振り返る。当初は市役所から民間業者に駆除を依頼したが、ラチがあかなかった。

「15年からは環境省主導で全島を挙げて女王蜂を狙う駆除作戦を開始。島内200の地区が協力してトラップを仕掛けた。今年も継続していて、やっと養蜂業も回復した」(扇氏)

 それでも、根絶やしにすることは非常に難しいという。「対馬のような島ではなく、神戸は地続きでしょ。最初に的確に効果のある対策をやるべきだ。本腰入れなきゃ全国に広がるよ」(扇さん)。神戸市と環境省が背負っている責任は非常に大きい。