大鳥居が“予兆”していたトンネル事故

2013年01月07日 11時00分

 昨年12月に山梨県中央自動車道の笹子トンネルで天井板が崩落し、通行中の9人が死亡する大惨事が起きたが、事前に危険を警告する出来事が遠く離れた東京で起きていた。重大な事態の予兆となっていたのは、東京・羽田の羽田空港(東京国際空港)の敷地内にある“いわくつきの大鳥居”。昨年2月に鳥居の一部が崩落したが、この大鳥居と笹子トンネルの事故には、無視できない接点があった。

「笹子トンネルの事故が起きることを大鳥居は教えてくれていた。神様の“お告げ”だった」と羽田の地元住民の間でささやかれているのは、羽田空港国際線ターミナル手前の天空橋駅前に立つ大鳥居が崩落した一件(本紙既報)だ。

 昨年2月上旬、大鳥居頂上付近の笠木と呼ばれる箇所の約1・5メートルがはがれ落ちた。「何か良からぬことが起きる前ぶれではないか」「たたりがある」と心配されていたのだ。

 同鳥居は数々のいわくつきの伝説を持っていた。もともと空港敷地内の別の場所に建てられていたが、撤去を試みるたびに事故が起き、1982年には日航機逆噴射事故で24人の死者が出たことで手つかずのままになっていた。ようやく14年前に撤去ではなく、場所を移転させることで事なきを得て、現在はパワースポットとして、元日には初日の出を望む人でごった返した。

 この大鳥居の崩落が笹子トンネル事故を予兆していたといわれる理由は崩落原因。笹子トンネルの事故は天井板を支えるボルトがコンクリート製の天井から抜け落ちた。一方、大鳥居も築80年以上のコンクリ製で、接合部分がはがれた崩落だった。ともに老朽化が主原因とみられる。

 地元在住で災害研究家の金子富夫氏は「大鳥居と笹子トンネルの事故は土木工学的には全く同じ状況。ともにコンクリ構造物で振動や風圧による繰り返し荷重が原因。何より3・11大震災や余震が続き、ダメージが影響していた」と指摘する。

 悲劇を生んだ笹子トンネル事故により新たな大事故の可能性を未然に防げたことも事実だ。事故後、国交省では全国のトンネルを緊急点検し、東京・大田区の首都高速1号の羽田トンネルが笹子トンネルと同じつり天井式の構造で、危険性が高いとして全撤去した。ちなみに、この羽田トンネルと大鳥居の距離はわずか600メートルの目と鼻の先なのだ。

 金子氏は「オカルトではなく、危機管理の観点から大鳥居が崩落したのを受け、コンクリ構造物には同様の危険性があるとみて、国交省や高速道路管理会社が羽田トンネルを入念に調べていれば、同構造の笹子トンネルの事故を防げていたかもしれない」と危機管理の甘さを指摘する。

 一方、大鳥居が発したシグナルは見過ごされただけでなく、いまだに崩落した箇所は修復されずに放置され続けている。

「大鳥居はまた崩落する危険がある。観光スポットで、不特定多数の人が訪れているのに、行政は知らん顔をしているのはおかしい。笹子トンネルの事故が起きただけに、なおさらです」と金子氏は早期修復の必要性を訴えている。