【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】人口13億人超の中国、インド、3億人超の米国に続き、人口世界4位は2億5000万人超のインドネシアだ。出生率も高く、2050年には3億人に迫るという予測も。

 そのパワーの源と言われるのが、精力剤を売る街中の屋台だ。トラックの荷台に数百種にも及ぶ商品が並び、周りにはテーブルやイスも。特に夜間の出店率が高い。商品はどれも5センチ四方ほどの小袋に入った粉末や錠剤で、パッケージのイラストは見るからに効きそう。

 西部スマトラ島の中心都市メダンの屋台店主によれば「ウチで扱ってるのは国産モノが多いが、マレーシア製やインド製もある。米国のも人気かな。中国製は効きが強烈でとにかく勃つから、高齢者がよく買っていく」という。

 勃起薬やED治療薬、興奮剤のような怪しげなものの他、プロテインやニンニクのエキス、ハーブ、漢方、青汁のような薬草、高麗ニンジンやロイヤルゼリーなど、下半身に効くとされるありとあらゆる品が揃う。

「そのまま飲んでもいいが、ブレンドするとさらにスゴい。組み合わせることで、客の好みに合わせた特製の薬になるんだ」(店主)。ギンギンになりたい人、持続力優先、また女性に飲ませたい場合、あるいはホルモンバランスを整えたい人、健康維持、若返り…目的によって配合も変わってくるそうだ。

 ただ、そのままでは味がひどく、とても飲めないので、オレンジやレモンなどのジュースで割ったり、生フルーツとシェークしたり、砂糖や氷を入れたりもする。客はお好みで作ってもらった特製の精力剤カクテルをそこで飲み、店主や他の客とエロ話に花を咲かせる。

 国民のほとんどがイスラム教徒で、アルコールを飲まない人が多い国だけに、この精力剤屋台は“男の社交場”的な意味合いも持つ。夕食後に立ち寄り、今宵の一戦に向け気合を入れる男たちでにぎわう。値段はブレンドによってまちまちだが、ジョッキ1杯で200~1000円ほど。

 客の大半は中高年で、中には女連れで来店するケースもあるという。

「どういう趣味なのか、女房と一緒に飲みに来るんだ。もちろん客たちの注目の的さ。2人が後でどんな痴態を演じるのか、とね。他の男たちのいやらしい視線に恥ずかしがる女房を見て、旦那は気持ちを高めてるんだろう」(店主)

 インドネシアならではの羞恥プレーといったところか。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。3年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。