緊迫する半島情勢において、開戦Xデーかと言われた25日は結局何も起きなかった。それでも油断禁物ではあるが、そもそもいまの北朝鮮に世界最強と目される米軍を迎え撃つ戦力があるはずもない。前線の人民軍兵士は栄養失調で走ることもままならず、頼みの核ミサイルは発射直後に空中爆発の危険も…。軍事パレードで見せた最新兵器の数々もハリボテである可能性が浮上している。吠えまくる北朝鮮の“笑撃シナリオ”とは――。

 朝鮮人民軍創建85周年の記念日を迎えた25日。国際社会では核実験やミサイル発射などの軍事行動が懸念され、米国の対応次第では戦争にエスカレートするXデーかと目されていた。結局、軍事挑発はなかったものの、少なくとも韓国の大統領選が行われる来月9日までは警戒が必要だ。

 事実、北朝鮮のアナウンスは日に日に過激さを増している。北朝鮮外務省報道官はこの日、さまざまな圧力を加える米国に対し「触れれば爆発する状態である朝鮮半島の現状において、全面戦争の導火線に火を付けるのと同様に危険なことだ」と再度警告。23日には原子力空母カール・ビンソンを「太って肥大したただの変態動物」と評し「一撃で水葬する準備を整えた」と威嚇した。だが、こうした過激アナウンスを「焦りの表れ」と見る人も多い。

 金正恩朝鮮労働党委員長は戦争ともなれば120万人の兵士を動員し、ものの数分で50万発のミサイルを韓国・ソウルに降らせ、日本にも核ミサイルを打ち込むと豪語しているが…。

 16日朝に行ったミサイル発射実験は、直後に空中爆発。意図的に爆発させた可能性もあるが、発射システムが不安定なのは間違いない。仮に核ミサイルで失敗すれば、空中で閃光を放った瞬間に辺り一面が焦土と化す。

 15日の軍事パレードでお披露目した大陸間弾道ミサイル(ICBM)などの最新兵器もハリボテ説が浮上。本物は発射後に先端の円すい部分が分離する作りになっているためつなぎ目が入っているが、パレードで公開したICBMに分離線は確認できなかった。

 フジテレビ系「とくダネ!」では、パレード中の正恩氏の会話を読唇術で解読。それによると「作り物のミサイルでも気付かないよな! よくやった。こうやって、この状態にして全部外に出さなきゃな」と話していたという。

 関係者によれば「行進する特殊部隊が持っていた銃や暗視ゴーグルもオモチャかもしれない」。

 頼みの地上部隊も期待できない。かねて食糧不足が深刻で、兵士の間では栄養失調者が続出。まともに走れない者もいるそうで、士気が高いとは言い難い。体格的にも180センチオーバーの屈強な兵士を揃える米軍に比べ、人民軍の兵役対象者の最低身長基準は142センチ。これも栄養不足が原因で、チビっ子兵士が増えているという。

「何より地上戦は戦争の最後の最後。それまでは空爆がメーンなので、いくら地上でいきり立っても意味がない。地上部隊は対空砲で米軍機を撃ち落とそうと必死になるだろうが、肝心の兵器がポンコツで届かない可能性がある」(同)

 北朝鮮には犬に爆弾をくくりつけて突撃させる“犬部隊”も存在するようだが、空爆の音に犬が驚き、逃げた別の場所で爆発する危険もある。

 もはやコントのような展開だが、金正恩政権はそうした実態を隠し、虚像を見せ続けることで相手をかく乱してきた。

 北朝鮮出身の父親を持ち、平壌市民の暮らしぶりを描いた著書「実録・北の三叉路」(双葉社)もあるライターの安宿緑氏は「いまやっているのは、いわばヤンキー同士が『殴ってみいや』と口喧嘩しているだけ。戦争を経験したことがないトランプ氏と正恩氏が本気でやり合うとは思えません」とコメント。

 何より平壌市内に限って言えば、正恩氏の大号令のもと開発を進めてきた。安氏が2013年末に平壌を訪れた時は、民間のタクシー会社ができ、高層マンションの建築ラッシュも始まっていた。

「北朝鮮は社会主義国家ですが、実は資本主義の要素も取り入れています。ハリボテに見えるかもしれませんが、せっかく大金をかけて近代化させた街並みが、米軍の空爆で壊されてはたまりません。そのことは正恩氏の頭の中にもあるはずです」

 チキンレースの結末やいかに――。