北朝鮮有事で拉致被害者救えるか

2017年04月24日 17時30分

正恩氏は拉致被害者をどうするのか(ロイター)

 朝鮮半島有事で拉致被害者はどうなる!? 米朝開戦が現実味を帯びるなか、心配されるのが北朝鮮に拉致された横田めぐみさんをはじめとした北朝鮮国内の残留日本人の安否だ。日本政府としては無事に拉致被害者を奪還したいが、戦争が始まれば決して容易ではない。北朝鮮が拉致被害者を“人質”にすることも考えられる。のんびりと金正恩政権が倒れるのを待ってからでは間に合わない可能性もある。一体どうすればいいのか――。

 緊迫する半島情勢。朝鮮人民軍創建85周年を迎える25日前後が最大のヤマ場とみられ、北朝鮮が6度目の核実験を強行しようものなら、ドナルド・トランプ米大統領(70)の号令で一気に戦争に突き進む可能性もある。

 そうなった場合、危惧されるのが40年前に拉致された横田めぐみさん(13=当時)をはじめとする拉致被害者だ。政府が認定している被害者は17人だが、実際ははるかに多いとされる。

 安倍晋三首相(62)は23日、拉致被害者家族会などが都内で開いた「国民大集会」に出席。拉致問題について「我が国が主体的に解決しなければならない最重要、最優先の課題だ」とした上で「トランプ政権に対し、日本にとって拉致問題は極めて重要だと伝えている。米国や国際社会と連携し、北朝鮮に早期解決を迫っていく」と、米国の協力を得たうえで、解決を目指す考えを示した。

 一部報道では、日本政府は半島有事が起きた際は「イラク方式」で拉致被害者の救出を検討しているという。これは2004年、フセイン政権崩壊後のイラクで、米国を中心とする暫定統治機構の同意を得て、自衛隊が邦人輸送した先例を念頭に置いている。

 今回のケースに当てはめれば、金正恩体制の崩壊後、国連決議に基づき設置された暫定統治機構の同意を得て、自衛隊がヘリコプターなどで拉致被害者を救出。自衛隊の武器使用には制限があるため、米軍に安全な任務遂行の協力をしてもらおうというのだ。

「コリア・レポート」の辺真一編集長は「拉致被害者救出は可能」とした上でこう語る。

「救出できるタイミングは交戦中か終戦後しかない。ただし、前者は米軍も必死なため、誰が拉致被害者か確認するわけがない。第一、日本政府から拉致被害者の写真を見せられていたとしてもそれは30年以上前のもの。トランプ大統領は『救出に全面協力する』と言うが、リップサービスと思っておいた方がいい。現実的なのは米軍が北を制圧した後でしょう」

 全員を無事に救出するためのハードルは限りなく高い。正恩氏は戦争となれば国民を兵士として総動員するとみられ、拉致被害者も日本にとっての“敵兵”として動員されかねない。また、拉致被害者を人質として、これまで以上に揺さぶりをかけてくることも予想される。

 現に北朝鮮の宋日昊・日朝国交正常化交渉担当大使は17日、平壌で記者団に対し「(拉致問題は)誰も関心がない」と話す一方で「日本側から要望があれば“残留日本人”問題に取り組む用意がある」と述べた。

 前出の辺氏は「北朝鮮は(2002年の日朝首脳会談以外では)拉致自体を正式に認めていないから『関心がない』と表現するしかない。ポイントはその後のコメントで、拉致被害者を残留日本人という言葉に置き換え『日本よ、どうするんだ?』とプレッシャーをかけつつ『日本が間に入って強硬路線のトランプを落ち着かせてくれ』とメッセージを送っている」と解説する。

 宋大使はわざわざ日本人記者がいることを確認してから、この発言をしたというから、すでに拉致被害者は戦争の駆け引きに使われているのだ。

「今後、極限状態に陥った正恩氏が拉致被害者の処刑をチラつかせてくることも想定できる。その時、安倍首相はどう判断するのか。金正恩体制崩壊後では遅い」とは半島事情に詳しいライター。

 北朝鮮当局は先週、中国吉林省の延辺大学科学技術学院に勤める米国籍の男性教授を平壌市内で拘束した。理由は明らかにされていないが、事実であれば北朝鮮が抑留する米国人は3人目。これもまた“人質”と見ていいだろう。

 一部では23日深夜、トランプ大統領、安倍首相、中国の習近平主席の3首脳間で半島有事に関する緊急の電話会談が行われたとの情報も出ている。事態は風雲急を告げている――。