静岡県藤枝市にある藤枝市郷土博物館で企画展「昭和レトロデザイン展~懐かしのホーロー看板とレトロゲーム体験~」(5月21日まで)が行われている。見どころは数百枚のホーロー看板だ。

 展示しているのは“日本一のホーロー看板コレクター”として知られる佐溝力氏(70)。これまでに集めた看板の数は約6000枚。

「ホーロー看板の収集を始めたのは、大阪万博が終わったころでしたので、もう45年くらい前のこと。当時、トラックの運転手をしていました。そうすると、旧道沿いにある民家がどんどん壊されていくのを見かけるんですよね。当然、ホーロー看板もなくなってしまいますよね。そんなことから、自分の車で集めに行くようになりました」

 最初は地道に集めていたが、15年くらい前からはネットオークションでも集めるようになった。

「55歳で会社を辞めましたが、もう全部つぎ込みましたよ。金額はよく分かりませんが、4桁はいっているんじゃないかと思います。これまでに集めたのは6000枚くらい。今回の企画展には350枚ほど展示しています。自宅にはその博物館があるのですが、1500枚余り展示しています」(佐溝氏)

 今や貴重品となったホーロー看板だが、これだけの枚数を集めている人は他にはいないだろう。

 ホーロー看板の誕生は、明治20年代までさかのぼる。テレビや新聞などが家庭に浸透する昭和50年代まで、商品広告デザインの代表格として、駅やバス停、商店の店先、塀、電柱など、人々の目に留まるところに掲げられていた。日本の広告文化史でも貴重なもので、鉄製看板で屋外掲示用として光沢のある塗装屋印刷で仕上げられているのが特徴だ。

 今でも地方に行くと、古い壁や納屋などに張られているが、そのほとんどは、ボロボロになったりさびてしまったりして。それでも人々の目を引きつけるのは、その個性的なデザインやキャッチコピーに魅力があるからだろう。