AV業界版“BPO”で「女優の人権擁護」どう変わる

2017年04月19日 07時15分

AV業界改革推進有識者委員会の面々。左から河合氏、代表委員の志田陽子氏、山口氏、歌門彩弁護士

「AV業界改革推進有識者委員会」が今月に発足。17日に都内ホテルで報道関係者向け説明会が開かれた。委員会は女優の人権擁護をテーマに掲げていく。作られた規制によって、お天道様の下を堂々と歩いていけるような業界にしたうえで「適正AV」を作ることを目標にするが、どんなことが起こっていくのだろうか。委員会メンバーを直撃した。

 委員会はAV業界外にいる第三者の有識者で構成される。出演者がAV業界で働くにあたっての自己決定権など人権の擁護に力を入れる。業界に対する指針をつくり、健全化を目指す。プロダクション、メーカー、取り次ぎなどの団体を包括的にまとめあげて、放送界における「BPO(放送倫理・番組向上機構)」のような役割を担う。

 大手メーカーやプロダクションは、自動的に委員会に加盟する流れができている。規則を破った加盟社・団体に罰則を与える力はないが、除名処分とその理由の公表によって社会的信頼を損なわせることができる。

 改革の動きは、出演強要問題に端を発したこともあり、女性の人権擁護を第一の主眼としている。模範契約書の使用を推奨。契約時やメーカーの面接時から、打ち合わせや制作時、撮影終了時までの映像を保存して、問題発生時の検証の「可視化」を「義務化」することも規則に書かれている。「警察や検察の取り調べの可視化」と同じ構図だ。

 なんだか堅苦しい団体にも思えるが、委員会メンバーで発起人の山口貴士弁護士は「出演者の人権が損害されなければ何をやっても構わないと思う」と語る。委員会はAVの内容・表現にはノータッチだけに、制作面に直接の影響を及ぼすものではない。

 発足の経緯に、業界側から請われて作られたという背景がある。実は出演強要問題は業界側の頭を悩ませる問題でもある。委員会の桐蔭横浜大教授(法社会学)の河合幹雄氏は「出演を強要された」「強制わいせつだ」と出演者から訴えられ、小金を引っ張られてしまうケースの頻出を明かす。

「プロダクション側が払っちゃってるんですよ。騒がれるよりは、先に払った方がよいとなる。そういう意味では、規制がしっかりすることでトラブルを防げると喜ぶ関係者は多いのです」(河合氏)

 また、業界の健全化が進むことで、意外な市場が盛り上がるかもしれない。会見では“現場飛ばし(無断の不参加)”をした女優を守る保険の導入も提案された。業界関係者は「違約金はすべて女優がかぶるか、事務所と女優でもつことが多い。元女優のマネジャーが代役に立つこともあるがレアケース」と語る。

「女優さん以外のメーカーやプロダクション側が保険金を払うべき。女優さんに任せると、保険に非加入の女優は立場が悪くなって仕事を断りづらくなる。歩行者じゃなく、運転者が入る自賠責のようなイメージに近い」(山口氏)

 保険会社の新商品ができるだろう。

 さて、委員会が認めたAVは「適正AV」と呼称される。将来的に「適正AVこそAV」との社会認知を目指す。全国規模の店に置かれる商品は適正AV限定になる見込みだ。委員会関係者は「これからは正規とアングラの差がさらに広がり、二極化しますよ。適正AVの認可マークも導入されるかもしれない」と展望を示す。業界の透明化・人権擁護は言うまでもなく必要だが、AVに闇を求めるユーザーも多い。需要があれば供給もなくなることはないだろう。

 皮肉にも「委員会非加盟の非適正AV」という商品が“地下”で好調な売れ行きを見せるかもしれない。