マニラの大人5〜7割が覚醒剤中毒者?

2017年03月31日 09時00分

シャブーをあぶるこの女性は“キメセク”中毒(撮影=八木貴史氏)

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】ドゥテルテ大統領のもと、フィリピンの“麻薬戦争”は激化の一途だ。すでに合法・非合法を含め7000人超の麻薬密売人・中毒者が殺され、警察だけでなく、自警団による“私刑”が横行しているともいう。

「そんな死のリスクを前にしても、ドラッグをやめない人は多い」とは、首都マニラのスラム街で取材を続けている八木貴史カメラマンだ。

 日本人観光客やビジネスマンが行き来し、日本人向けのカラオケなどが軒を連ねるマラテ。この繁華街にいくつもあるスラムでも麻薬が蔓延しているという。「スラムの中に『ドラッグデン』と呼ばれる秘密の吸引場所が点在します。近隣の中毒者の共有スペースですが、知らなければ見つけられないでしょう。日常に溶け込んだ路地裏の一角が、ある時間だけドラッグデンとなるのです」

 中には身内やドラッグ仲間が殺された人も少なくない。“明日は我が身”なのに、麻薬の快感からは逃れられない。「絶対に顔が写らないようにという条件で撮った21歳の女性は、セックスの快感を増幅させる目的で使っているそうです」

 出回っているのはマリフアナやヘロインなどではなく覚醒剤。日本と似たように「シャブー」と呼ばれる。フィリピン人のシンジケートや中国人マフィアが供給源になっており、なんと刑務所の中で密造されているという話もある。

 1回の使用分、1パケット(0・01グラム)が300ペソ(約660円)。麻薬戦争前は200ペソで、リスクの分だけ値上がりしたそうだ。それでも「マラテなど下町のスラムでは、大人の5~7割がシャブー中毒者という指摘もある」と八木氏。

 庶民の暮らしに深く根付いてしまった麻薬を一掃するにはまだまだ時間がかかりそうだが、マニラ在住の駐在員いわく「明らかに治安が良くなってきた」。マラテやマカティといった歓楽街で働く風俗嬢も「夜でも安心して家に帰れる。以前は仕事が終わった後は、怖くてお店に泊まり込んでいたから」と話す。

 だが、麻薬戦争最前線の凄惨現場を見てきた地元マスコミからはドゥテルテ大統領批判も。現地報道によれば、ロブレド副大統領も「超法規的殺人は明らかな人権侵害だ」と語っている。大統領弾劾の動きも進み、政権は不安定。ドゥテルテ氏のかじ取りやいかに…。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。3年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。

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