政府は21日、犯罪を計画した段階で処罰する「共謀罪」の新設を柱とする組織犯罪処罰法改正案を閣議決定し、国会に提出した。

 同趣旨の法案は過去に3度、国会に提出されたが、世論と野党の批判を受けて廃案に追い込まれた。政府は、2020年東京五輪・パラリンピックを見据えた「テロ対策」を掲げ、今国会での成立を急いでいる。

 今回の改正案は、捜査権乱用への懸念を払拭するため、処罰対象を「組織的犯罪集団」に限定した。

 衆院法務委員会で、金田勝年法相(67)は「国内外の犯罪情勢を考慮すれば、テロリズム集団、暴力団、麻薬密売組織、振り込め詐欺集団などに限られる」と説明した。

 では、どういう行為が罪に問われるのか。

 政府関係者は「重大な犯罪については、277の犯罪を対象にした。テロリズム集団・組織的犯罪集団が、重大な犯罪を2人以上で計画し、実行準備行為をした段階で、摘発・処罰できる」と話す。 

 しかし、野党側は「捜査機関による乱用や、市民団体に適用される恐れになる。既存の法律で十分に対応できる。もう一度、最初から法体系の組み立てを見直すべきだ」と反発している。

 民進党の階猛政調会長代理(50)は「組織的犯罪集団の定義があいまいだ」と指摘した上で、「後づけで認定でき、普通の会社員なども監視・捜査の対象になり得る」と懸念を示す。

 自由党の小沢一郎共同代表(74)は「国民の生活を規制する。権力者の運用でどうにでもなる。今の安倍内閣は権力の乱用をちゅうちょしない。危険だと思う」と警戒する。

 野党側は国会で徹底議論し、廃案に追い込む姿勢を示したが、十分な審議があるかは微妙な状況だという。

「同改正案の審議入りは来月中旬以降になる。衆院法務委は、定例日が週3日。今国会の会期末は6月18日です。東京都議会議員選挙(7月2日)が控え、会期延長が難しい。審議日程は、窮屈になることが予想される」(前出の同関係者)

 同改正案を巡る与野党ガチバトルの行方が注目される。