トランプ米政権発足後、初めての日米首脳会談を終えて13日夜、安倍晋三首相(62)が帰国した。首脳会談後、フロリダにあるトランプ大統領(70)の別荘に迎えられ、5時間の“ゴルフ外交”や2度の夕食会などの歓待を受け、蜜月ぶりをアピールしたが、トランプ氏を敵視している勢力から見れば、面白いハズはない。既にIS(イスラム国)から名指しで標的にされている日本だが、過度なトランプ傾倒でテロに巻き込まれる危険はないのか――。

 安倍首相はトランプ氏とゴルフ場を“ハシゴ”し、27ホールも回った。共同声明で日米同盟の強化を宣言した通りに表面上は、親密な関係構築が進められるともいえる。

 一方で、移民政策などで世界中から反感を買い、各国のリーダーが距離を置くトランプ氏にここまで擦り寄っているのは日本だけだ。民進党の野田佳彦幹事長(59)は13日、イスラム圏7か国からの入国を禁止した米大統領令について発言を控える安倍首相を「のび太君はびびりながらもモノを言うことがある。(首相は)完全にスネ夫君」と批判。山井和則国対委員長(55)も「あまりにべったりだと日本が戦争やテロに巻き込まれるリスクが高まる」と危機感を口にした。

 IS壊滅を掲げたトランプ氏には、IS側から「暗殺指令」が出ている。さらに大統領令を巡って、イスラム過激派の間では、米国へのジハード(聖戦)を仕掛ける動きが加速している。

 1月末には、米国がイエメンで実施したイスラム過激派組織「アラビア半島のアルカイダ」拠点の空爆では、アルカイダの戦闘員14人を殺害した一方で、女性や子供を含む約30人の民間人も犠牲になった。その中に同組織の元指導者アウラキ容疑者の娘(8)も含まれていたといわれ、いつ報復テロが起きてもおかしくない状況だ。

 そんな緊迫した状況下で、トランプ氏との一蓮托生で、日米の親密ぶりが際立てば、日本がテロ攻撃に遭う危険性が高まったのではないかと心配になるのは当然の流れだ。

 ただ、中東事情に精通する軍事アナリストの黒井文太郎氏によれば、ISは安倍首相のことを“小粒”といわんばかりに全く意識していないという。

「トランプにこびた安倍首相の外交姿勢を欧州やアメリカの良識派、または今回の首脳会談を報じたアラビア語のメディアでもあざけっています。しかし、ISにとって日本は自分たちの生活圏とは関係ない存在で、大したこともやっていない。一目を置いていない日本人を殺害しても評価されません。向こうもジハードは命がけですから日本人相手に自爆しようとは思わない」(黒井氏)

 15年には、シリアで拘束された後藤健二さんと湯川遥菜さんがISに殺害された。犯行声明でISは「このナイフは後藤を殺すだけでなくお前(安倍首相)の国民がどこにいようとも虐殺をもたらすだろう。日本の悪夢を今始めよう」と日本をテロの標的に名指ししているが、大丈夫なのか?
「この時、ISが日本を名指ししたのは身代金を取りたかったからです。IS過激派のサイトなどをチェックしても日本が話題に出てきたことはない」(黒井氏)

 海外ではISに傾倒した“一匹狼”型テロリストのローンウルフや過激派組織の犯行に日本人が巻き込まれるケースが相次いでいるが、日本国内でテロに及ぶまでの“脅威”は現時点ではないという見方だ。

 とはいえ、20年には過去、何度もテロに遭遇し、危険にさらされた五輪が控え、安倍首相とトランプ氏の関係はさらに世界中から注目を集める。蜜月ぶりをバカにされるだけでは済まない事態とならないことを祈るばかりだが…。