中国の旧正月「春節(1月28日)」前後の休暇に伴う特別運輸態勢「春運」(1月13日~2月21日)では、海外で働いている人が帰郷したり、海外で過ごしたい人が出国したりと、中国国内外で延べ30億人が移動するといわれている。

 昨年、来日した中国人は約637万人と過去最高で、そのうち春節休みの期間は約190万人。北京の日本大使館によると、昨年、中国人に発給した個人観光査証(ビザ)の数が初めて団体観光を上回った。政府関係者は「行き先が決まったツアーではなく、自由に楽しみたいという需要が増えている」と分析する。

 これまで日本への中国人観光客は、東京や大阪など大都市への団体ツアーでの「爆買い」がメーンだった。中国の金持ちは爆買いを一通り経験し、リピーターの間では地方で澄んだいい空気を堪能する個人旅行「洗肺(シーフェイ)」がブームになっている。

 それもそのはず。相変わらず中国の大気汚染は深刻。きれいな空気を求めて佐賀や福井、長野などの地方に足を延ばすようになった。

 中国事情に詳しいルポライターの奥窪優木氏は「洗肺旅行は、もともと3~4年前に出てきた言葉で、そのときは金持ちが北欧とかアルプス、南極などに、おいしい空気を吸いに行くというようなイメージだった。それが最近では、北海道や長野など、日本の地方観光地が手軽な洗肺スポットとして売り出されているようです」と指摘する。

 背景には爆買いの衰退に加えて、中国の旅行代理店が知恵を絞っている面もあるという。

「買い物に代わる日本旅行の目的の一つとして、中国の旅行会社が『洗肺』をプッシュしているからです。ちなみに日本での洗肺ツアーの際には、薬局で小林製薬のダスモックやツムラの麦門冬湯などの気管支の疾患に効くとされる薬を買って帰るのがお決まりとか」(同)

 漢方薬なら中国が本場のはずだが、やはり土壌汚染、大気汚染を嫌って、日本製品を求めるようだ。