逮捕された「性病サギ医」の手口 数千人も“誤診”被害の可能性

2017年01月19日 07時30分

本紙による性病告発報道記事

 60代の男性会社役員に性感染症と虚偽の診断をし、薬代名目で現金をだまし取ったとして、警視庁捜査2課は17日、詐欺容疑で診療所「新宿セントラルクリニック」(東京都新宿区)院長で医師の林道也容疑者(69)を逮捕した。捜査関係者によると、林容疑者は「間違っています。後で説明します」と容疑を否認している。本紙が2014年5月から報じてきた“性病詐欺”にようやく一つの区切りがついた。

 クリニックをめぐっては、会社役員を含め計3人が同様の被害を訴えて警視庁に告訴。林容疑者は12年9月~14年7月ごろ、この3人から計約10万円を詐取していたとみられる。

 逮捕容疑は12年9~12月、受診に訪れた東京都国分寺市の会社役員に血液検査をした際、クラミジア感染症ではないのに「陽性だった」と虚偽の診断をし、処方した薬代計約2万6000円を詐取した疑い。会社役員は身に覚えはないが、陰部が赤くかぶれたようになったので、受診しただけだった。後のセカンドオピニオンでは単なるあせもと診断されている。

 検査キット製作会社によると、血清中のクラミジアの抗体量を調べ、基準値0・90以上で陽性となる。捜査関係者によると、林容疑者は感染を誤信させるため、0・00を上回ると検査結果を示す用紙に「陽性」と記載していた。捜査2課は、ほかにも現金を詐取していたとみて調べている。

 医療関係者は「健康な人間でも0・20とか、ちょっとは数値は出るから、厚労省が0・90をカットオフ値(陰性と陽性を分ける値)と定めたわけです。0・00なんてありえない数字です。この“林メソッド”では、健康な人間でも必ずクラミジアになってしまう。驚くべきことに林容疑者は2人目の被害者の(民事)裁判で『私の基準値は0・00。数千人に診断を下してきた』と話しているんです」と語る。

 数千人もの“誤診”被害者がいる可能性がある。

「裁判を通して、林容疑者は『医者は専権事項として診断できる。検査と問診を含め、総合的に診断するんだ』と言い続けた。そして原告弁護士と裁判官に対しても『キミたちは医者じゃないから分からないだろうね』という態度。だから、今回の逮捕について『間違っている』と言うのも容疑者にとっては当然なんでしょうね」と同関係者。

 会社役員は診断に基づいて投薬治療を続けたが体調が改善せず、12年12月に別の病院を受診。前出のようにセカンドオピニオンで陰性と診断されたため、14年4月に詐欺容疑で警視庁に告訴した。

 また、会社役員を含めた複数の男性が、林容疑者に損害賠償を求めて提訴。会社役員については昨年2月、別の40代男性は同6月に、最高裁で林容疑者に賠償を命じる勝訴判決が確定している。

 会社役員は「私が怠慢だと感じるのは、病院を指導するべき立場の東京都福祉保健局と保健所です。何度も健康保険料の不正請求を告発し、立ち入り検査をやるように求めたのに、きちんと動いてくれなかった。適切に調べて林容疑者の保険医登録や保険医療機関指定を取り消していれば、私以降の被害者は出なかった。警察が捜査し始めた14年以降も新宿セントラルクリニックの看板が駅などに掲示され、被害者がどんどん増えているのが腹立たしかった」と明かす。

 林容疑者は昨年11月、共同通信の取材に「やましいことは何もない」と答えていた。