【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】昨年末、芸能界を電撃引退した成宮寛貴氏(34)の“逃亡先”と一部で報じられたバリ島は、芸能人やスポーツ選手のお忍び旅行が確かに多い。日本人客が集中するクタやウブドを離れれば、人目にもつきにくい。

 インドネシアで麻薬は厳罰だが、バリは国際的リゾート地ゆえ取り締まりも比較的緩い。これも多くの長期滞在者を引きつける理由の一つ。ソフトドラッグに寛容なオーストラリアから、大麻などを持ち込むやからもはびこる。

 さらなる無法地帯としてジャンキーに知られているのが、インドネシア西部スマトラ島のトバ湖。世界最大のカルデラ湖で、7万年余り前に破局噴火した際には、当時の人類をほぼ絶滅に追いやったとされる巨大火山だ。噴火口は湖になっていて、そこに浮かぶサモシール島は風光明媚で地元民に人気だが、トゥットゥッと呼ばれる小さな村には欧米人がたむろする。

「ゲストハウスや飲食店が並び一見平和だが、村の雑貨屋の看板には『マッシュルームあります』などと書かれている」とはバックパッカー。いわゆる幻覚・酩酊作用のあるミナミシビレタケやアイゾメヒカゲタケなどの毒キノコ類のことだ。俗に「マジックマッシュルーム(MM)」と呼ばれ、日本では2001年に伊藤英明(41)が食べて救急搬送されたのが有名。この騒動もあり翌02年には規制され、今では多くの国で違法だ。
 インドネシアでも同様だが「サモシール島は関係ない」と地元民。「ここは俺たちバタック人の土地。政府が決めた法律より、バタックのルールのほうが強い。キノコは俺たちの文化」なのだそう。

 インドネシアは多民族国家で、中央政府を仕切るのは主にイスラム教のジャワ人だが、トバ湖周辺に住むバタック人はプロテスタント。中央から送られてくる警察や公務員はまるで力がなく、バタック人の天下なのだ。

「雑貨屋ではたばこと同じケースにMMが平然と並んでいる。1袋約700円。レストランにもキノコ入りオムレツがあり約1400円だった。ピザのトッピングにもしてくれる。キノコだけでなく、『大麻買わない?』と地元主婦が持ち掛けてきたりも」(バックパッカー)

 砂糖ヤシの樹液が原料で、フルーティーなどぶろくのような味わいの密造酒「トゥアク」も流通している。毎晩7時になると、闇醸造所から各町の酒場に“一番しぼり”が運ばれてくるが、警察も見て見ぬフリ。この年末年始、島の山中では無法パーティーが行われていたという。日本人旅行者は少なく、身を潜めるには穴場かも。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。3年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。