新潟・糸魚川大火の警鐘「もしも大都市で起こったら…」

2016年12月23日 19時00分

 立ち上る火柱が年の瀬の街を襲った。新潟県糸魚川市で22日に発生した大規模火災。炎の勢いは衰えず、夜空を赤く染め上げた。日本海に向けて吹き付けた強風が、広大な延焼の原因となったのか。約140棟が焼けた中、死者や重傷者が出なかったとみられるのは不幸中の幸い。とはいえ住居を失った市民らのダメージは計り知れない。23日には首都圏でも火災があり、東京を始め各地にとって年末の大火は人ごとではない。

 

 大火から一夜明けた23日、地元消防などは引き続き消火活動を続けた。火は出火から約10時間半後にほぼ消し止められ、消防が鎮火を確認すれば県警と合同で出火原因を調べる。

 

 市は約360世帯、約740人に避難勧告を出しており、鎮火後に勧告を解除する方針。22日夜の時点で、市内3か所に計40人以上が避難し、市は保健師6人を配置し対応に当たった。

 

 火災が発生したのは22日午前10時半ごろ。市の中心部にある中国料理店から出火し、強風にあおられ次々と燃え広がり、同日夜までに約140棟に延焼した。総務省消防庁によると、地震や津波の被害を除くと過去20年で最悪の燃損棟数となった。

 

 糸魚川市消防本部によると、約7万5000平方メートル(東京ドーム約1・5個分)に被害が出たとみられる。「大火」といわれる建物の燃損面積が3万3000平方メートル以上で確定すれば、日本海沿岸では1976年に山形県酒田市で約15万平方メートルに及んだ大火以来の規模となる。

 

 現場に駆けつけた元東京消防庁消防官で防災アナリストの金子富夫氏は「伝統的な木造建物が密集し、瞬間最大風速で24メートルを超える強風による飛び火で広がった。海側に風が吹いていたのが不幸中の幸いで、なんとか焼け止まったが、逆側ならもっと被害が出ていた」と指摘する。

 

 火災発生時に消防車が6台しか出動できなかったように、大規模火災に対する消防力が圧倒的に不足していた。水も足りなくなったが、「ミキサー車に海水を積んで、水槽にぶちまけ、給水していた。珍しい光景で、地方ならではの消火方法」(金子氏)。

 

 首都圏も人ごとではない。「東京の下町など木造住宅密集地域で火災が起き、強風が吹けば同じように一気に燃え広がる。東京の場合は消防車の台数が多いので、すぐに消し止められるが、同時多発で起きれば別。怖いのは関東直下の地震などが原因で、10か所で同時火災が起きればお手上げです」(同)

 

 東京都は「木密地域不燃化10年プロジェクト」と題し、燃え広がらない街づくりを進めている。

 

「古い建物を取っ払って、新しい建物を造るというが、簡単にできるはずがない。結局、不燃塗料を壁に塗るなどして、時間稼ぎをするしかないのが現実です」(金子氏)

 

 火災の波及被害は大きい。折しもこの日夕刻、神奈川県平塚市で鉄骨平屋の作業場約1500平方メートルが全焼する火災があった。東海道新幹線の沿線だったため、JR東海によると、東京―新大阪の上下線で運転を一時見合わせた。計12本が運休し、156本に最大2時間10分の遅れが生じて約16万人に影響した。

 

 新幹線に乗り合わせた高須クリニックの高須克弥院長はツイッターで、車内缶詰め状態になった様子を実況中継。「いやだぜ、なう。」などとつぶやいた。

 

 同日夜、さいたま市大宮区ではステーキ店から出火し、延焼。市は23日朝に鎮火の情報をネットで伝えた。

 

 各地で起こった年の瀬の火事。住宅密集地で“同時大火”が起きたらひとたまりもない。