東京・渋谷のバレエ教室で今年7月に女性講師(24)の右手親指をブロックタガネとカナヅチで切り落としたとして、傷害罪に問われた元生徒で住所不定無職の橋本浩明被告(41)の公判が14日、東京地裁(菅原暁裁判官)で行われた。被害講師が別室で電話をつなぎ“証人出廷”した。

 橋本被告は2014年に教室に入会し女性講師のクラスに通っていたが、補講を知らされなかったことに恨みを持ち、レッスン中に暴言を吐いたり暴れたため、教室が退会処分にしていた。たかが連絡ミスで何度もなじり、バレリーナの指を切り落とした被告。被害講師は、その執拗で異常な性格を以前から感じ取っていた。

 被害講師によると「『ひざ!』と注意すると、この世界では“ひざが曲がっている”という共通認識なのに『ひざは名詞なのでそれじゃ分からない』とか、『脚をもっと上げて』と言うと『何センチですか』と返してきた」と言う。学ぶ姿勢が全く見られなかったという。

 しかも「講師の言ったことが理解しきれない」ことを理由に、レッスンを丸々ビデオ撮影していたというから気持ち悪いことこの上ない。「撮影タイムを別途設けるから」と、講師が注意してもお構いなしだったという。講師や女性受講者のレッスン風景をエロ目的で収集していた疑いもますます高まる。

 退会処分後もネチネチと恨みを持ち続けた被告は被害講師の自宅玄関に「I’LL BE BACK」と親指ではなく中指を突き立てたイラスト入りの貼紙をしたり、教室責任者に「退会理由を説明しろ。押しかけて警察を呼ばれてもすぐに出てきて講師の自宅に行くぞ」などと脅しメールを送っていた。

 音大出の被害講師はピアノの全国大会で入賞経験もあり技巧曲のショパン「幻想即興曲」を得意としたが、接合手術を受けた右手親指は元には戻らない。

「バレエとピアノを20年以上努力したからつかんだ職業。勝手な思い込みで積み上げたものを崩された」と悔しさをにじませた。