孫正義氏とトランプ次期大統領 電撃会談の思惑

2016年12月08日 07時30分

ご機嫌な孫氏(右手前)とトランプ氏(ロイター)

 米国のドナルド・トランプ次期大統領(70)とソフトバンクグループの孫正義社長(59)が6日、トランプ氏のお膝元ニューヨークで電撃会談し、米国内で500億ドル(約5兆7000億円)を投資し、5万人の新規雇用を創出すると表明した。先月の安倍晋三首相(62)に続いて今度は日本の超大物企業家と顔合わせしたトランプ氏。不動産業で富を築いた次期大統領は、日本有数の資産家でもある孫氏とディール(取引)を成立させたのか――。

 安倍首相も先月訪れたニューヨーク中心部にある「トランプタワー」で行われた会談。当時はバラク・オバマ大統領(55)への配慮から安倍氏とトランプ氏の生ツーショットが報道陣に公開されることはなかったが、今回は相手が実業家ゆえか、トランプ氏は笑顔で孫氏との写真撮影に応じた。

 身長約190センチのトランプ氏は、約160センチと伝えられる孫氏の肩に手をかけて友好関係をアピール。

 孫氏はビジネスのプレゼンテーション資料とみられる書類を報道陣に掲げた。ともに赤系統のネクタイで、息の合ったところも見せた。

 トランプ氏が米大統領選後に日本の大企業経営者と会談したことが明らかになるのは初めて。孫氏は、投資や雇用創出の計画を説明したと明かした上で「米国内のベンチャー企業に投資する」と述べた。

 この会談がよほどうれしかったのか、トランプ氏はツイッターで「日本のマサが米国でのビジネスに500億ドルを投資して5万人分の新たな仕事を作りだすことに合意してくれた」と孫氏を「マサ」と呼んで会談の内容を発信した。

 続けて「マサは、私が大統領選で落選していたら、これを行うことは決してなかったと言っていた」と孫氏の発言を引用。ヒラリー・クリントン氏(69)が当選していたら“あり得ない”話だとして、自分の手柄であるとアピールすることも忘れなかった。

 テレビ朝日の報道によると会談は孫氏の提案で実現し、約45分間行われた。もっとも、トランプ氏はツイッターで孫氏が投資に「合意」したと表現しており、自身が主導権を握っていたと示唆している。4日、生産拠点を国外に移した米企業の製品に35%の関税を課すと警告するなど、企業に対する“圧力”をかけまくりのトランプ氏にとって、雇用の確保は“一丁目一番地”とも言える重要課題。日本からやって来た孫氏の投資表明は、就任前における最大級の成果に違いない。

 一方の孫氏は「米国がもう一度、ビジネスをやる国としてチャンスが出るのではないか」と期待感を語った。ソフトバンクは2013年に米携帯電話大手スプリントを傘下に収め、今年9月には英半導体大手アーム・ホールディングスを約3兆3000億円で買収し、事業の幅を広げている。10月には、サウジアラビアで最大10兆円規模のビジネス基金を創設することが明らかになり、話題を呼んだ。

 経済誌フォーブスは今秋、トランプ氏の資産は37億ドル(現相場で約4200億円)と報じた。一方、孫氏は今春発表された同誌の「日本の富豪50人」で第2位。ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長(67)の1兆7930億円に次ぐ1兆6390億円の資産額。その両者がニューヨークで会ったことは富豪会談とも言える。

 今回表明された投資の事業分野などは現時点で不明。ソフトバンクは携帯電話からIoT(モノのインターネット化)に軸足を移していくとみられており、巨額基金の創設にはそれなりのメリットを見込んでいることだろう。政治では素人のトランプ氏は、来年1月の就任後もビジネスと同様に「ディール」を原則に政治判断をしていくと言われる。

 トランプタワー会談ではどんな取引があったのか…。