アジア初進出の地にバリ選んだトランプ

2016年11月26日 09時00分

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】ドナルド・トランプ次期米大統領(70)は、世界各地にホテルやカジノ、オフィスビルなど多数所有する「不動産王」だが、アジア進出はまだ。その足掛かりがインドネシア・バリ島に建設予定の「トランプ・インターナショナル・ホテル&タワー・バリ」だ。

 

「トランプのグループが昨年8月、インドネシアの有名財閥MNCグループとパートナー契約を結んだ。ニューヨークでの調印式にはトランプ自ら出席。壮大なゴルフコースも完備した“6つ星”超高級リゾートだって」とは、首都ジャカルタの駐在員。

 

 計画発表当時、トランプ氏は米大統領選の泡沫候補だったが、次第に勢力を増し過激発言を連発。イスラム教徒の米国入国を拒否するなどの差別発言も繰り返し、ホテル建設予定現場では批判が殺到した。建設反対、インドネシアも米国人を入国拒否すべきと言う地元民も続出。

 

 インドネシアは国民の9割がイスラム教徒だが、バリ島では独特の宗教「バリ・ヒンドゥー」が根付いている。だがトランプ氏への反発は強く、建設予定地がバリでもとりわけ大事にされているタナ・ロット寺院そばということも物議を醸した。「タナ・ロット周辺は、現オバマ米大統領の母親アン・ダナムさんに縁ある場所なんです」と明かすのは、オバマ政権に詳しい地元記者。

 

「アンさんはオバマ氏を産んで離婚し、インドネシア人と再婚してこっちへ移住。オバマ氏も幼少時代インドネシアで一時過ごしてます。人類学者の彼女はタナ・ロットをよく調査・研究で訪れてました。タナ・ロットをバックに撮った自分の写真を表紙にした著書もあり、インドネシアでの業績は高く評価されてます。トランプ氏には、そんなオバマ家への対抗意識があるのではという噂も」

 

 SNSを通じ抗議活動も広がり、オンライン嘆願運動では4万以上の署名を集めた。トランプ氏のインドネシアでのビジネスを中止させるよう大統領への直訴もあったが、大きなデモには至っていない。冒頭の駐在員が声を潜める。

 

「トランプと組んだMNCグループは、不動産などを多角的に手掛ける巨大コングロマリットだが、中核はメディア。新聞やテレビ、ネット、広告を支配する巨大企業で、テレビ局を4つ持ち、電通や楽天とも提携し、自前の衛星まで運用している。だからトランプに不利な報道が少ないと勘ぐる声もある」

 

 一方で「トランプさんは優秀なビジネスマン。アジアでも特に経済成長が著しい我が国への投資は『儲かる』と踏んだから。雇用も増えるし、いいと思う」と楽観的な地元民もいる。アジア初の“トランプ・ホテル”は年明け着工予定。

 

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。2年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。