韓国・朴大統領「捜査協力拒否」の裏 弾劾には3つの高いハードル

2016年11月22日 07時15分

捜査に協力しない姿勢を示した朴大統領(ロイター)

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領(64)の親友で、国政介入の嫌疑がかかる崔順実(チェ・スンシル)容疑者(60)と大統領府の元高官ら計3人が20日、職権乱用などの罪で韓国検察に起訴された。検察が「大統領も相当部分で共謀関係にある」との見方を示すと、朴氏の弁護士は「検察の事情聴取には一切応じない」と強硬姿勢を表明。当初は捜査に応じる姿勢を見せていた朴氏や大統領府だったが、態度を一変させた。専門家は朴氏が「“伝家の宝刀”である戒厳令を発令する可能性がある」と指摘している。

 検察が朴氏の共謀関係を起訴状で明記したことに対し、韓国大統領府は20日「検察の捜査は公正さと政治的な中立が守られたとは思わない」と反論した。

“親友”崔被告の緊急逮捕を受けて4日に出した談話で朴氏は「私も検察の捜査に誠実に臨む覚悟がある」としていたが、20日、朴氏の柳栄夏弁護士は検察による朴氏の事情聴取について「要請には一切応じない」と一転して拒否した。

 毎週、大規模な退陣要求デモが続き、すでに一部調査で支持率は19~29歳の若者の間で0%となった朴大統領だが、この強気は一体どこからきているのか。「コリア・レポート」の辺真一編集長は「どんなことがあっても大統領をやめないという決意の表れだ」と指摘する。

 韓国憲法の規定では大統領は在任中、内乱罪などを除いて起訴されないが、本紙既報のように退任すれば逮捕は免れられないため、朴氏が大統領の座にしがみつくのは必至だ。手続きにのっとり、大統領を罷免するにしても、弾劾には3つの高いハードルがあるという。

「一つは法律違反を立証すること。朴大統領が捜査に応じなければ立証は難しい。来月から始まる(政府から独立した)特別検察官による取り調べには、国民感情を抑えるためにも応じざるを得ないが、捜査終了までに4か月もかかるのです」と辺氏。

 2つ目に、韓国の憲法では大統領が違法行為をした場合に罷免する弾劾の手続きを定めているが「弾劾には国会議員(定数300人)の3分の2の賛成が必要で、与党議員129人の中から29人が造反する必要がある」(辺氏)

 3つ目は「国会で弾劾決議が可決してから憲法裁判所の裁判官9人のうち6人が決議を有効と認めなければなりません。現職3人は朴大統領のご指名で、裁判長も大統領が選んだ人物なのです。“弾劾できるならやってみろ”という気持ちでしょう」(辺氏)。

 特別検察官の捜査に4か月、憲法裁判所の判断にさらに数か月を要するため、ほとぼりが冷めるのをじっと待って、次の大統領選(来年12月)まで時間稼ぎする作戦のようだ。

「その間に(1月に就任する)トランプ米大統領や金正恩氏が暴れて有事が現実になれば自分のスキャンダルなんてすっ飛ぶことも計算に入れているのです」(辺氏)

 12日にソウル・光化門で行われた退陣要求デモは100万規模の人が集まったが、翌週19日には参加者も半減しており、国民の間でも“デモ疲れ”が出始めている。“大卒難民”と呼ばれる就職難にあえぐ学生や、受験戦争に疲れた若者らがうっぷんを晴らす格好の受け皿となったが、平和的デモのため“撤収”も早い。

 辺氏は「『長女は親父に似る』という韓国の言葉通り、朴正熙元大統領が暗殺されるまで、18年間の独裁政権運営を乗り切った方法をよく知る朴槿恵大統領だけに、今後国民が『何が何でも引きずり降ろす』と暴発した場合“伝家の宝刀”の戒厳令を発令して軍隊を出してくる可能性もある」とも指摘した。
 検察との徹底抗戦を示した朴氏の“悪あがき”が始まったといえそうだ。