朴大統領が居座る理由 任期残し辞任後に逮捕なら恐ろしい将来

2016年11月17日 18時00分

任期切れまで大統領にしがみつきたい朴氏(ロイター)

 韓国の朴槿恵大統領(64)の親友、崔順実(チェ・スンシル)容疑者(60)による国政介入疑惑で、検察関係者は16日、朴氏は「疑惑の中心にいる」との認識を示した。崔容疑者の勾留期限である20日が迫る中、起訴前に朴氏の事情聴取が不可欠だと強調、18日までに聴取に応じるよう大統領府に求める方針を明らかにした。追い詰められる朴氏だが、大統領の座を手放すつもりはなさそうだ。その理由、今後の展開を専門家が大胆推測した。

 

 検察は、早期の聴取を拒んだ朴氏側が求めている書面調査は受け入れず対面での聴取が必要だと主張。聴取中や終了後に「容疑者」として扱う可能性について「聴取前には分からない」(検察関係者)として、否定はしなかった。

 

 朴氏側が15日、聴取先延ばしを図る動きを見せたことで、捜査逃れを狙っているとの世論の反発が拡大。検察は朴氏側の思惑が通る展開になれば捜査への信頼性が揺らぐとみて、あくまでも崔容疑者の起訴前の聴取を目指す姿勢を示した。朴氏側は16日、聴取日程について沈黙し、聴取実現の見通しは立っていない。

 

 周囲が次々に逮捕され、追い詰められる朴氏。大統領退陣を求めるデモも拡大していき、ソウルの中心部で12日に行われたデモは警察推計で約26万人、主催者発表で100万人、ソウル市推計で126万人以上が参加した。

 

 今後の動向について、韓国事情に詳しい文筆人の但馬オサム氏は「朴大統領は逃げ切る腹です。なぜなら、辞任は即逮捕を意味しますから。むろん、(2018年2月までの)任期を終えた時点での逮捕は免れないのですが、任期を残しての(辞任で)逮捕という不名誉は絶対避けたいはずです」と語る。

 

 遅かれ早かれ、逮捕されるが、しがみつく理由は明確にあるという。

 

「ひとつは儒教国家・韓国の独特の墓文化です。韓国は、何よりも先祖の墓を大切にします。歴代大統領は死後、護国英雄の眠る国立墓地に埋葬されます。任期を残しての逮捕となれば、その資格が剥奪される恐れがあるのです」と但馬氏。

 

 韓国には国立墓地の設置および運営に関する法律(国立墓地法)がある。全斗煥、盧泰愚元大統領は、内乱罪などで実刑となったため死後に国立墓地への埋葬の可否をめぐって国会で何年も議論されてきた。結果的に埋葬は可能と判断されたようだが、日本人にはちょっと理解しがたい文化だろう。

 

「独身で死後、チェサ(法事)をしてくれる子がいない朴大統領にとって、国立墓地から外されるということは、死後の安泰を奪われることと同じで、これは現世での逮捕より恐ろしいことなのです。まして、彼女に対する国民の恨(ハン)が、歴史的評価がいまだ分かれる父上の朴正熙元大統領に向かう危険性もあります。朴槿恵の墓を追い出したついでに朴正熙の墓も追い出せ、という話になる可能性もなくはないのです」(同)

 

 また、内政はガタガタ、経済は沈没、北朝鮮の増長による安全保障上の脅威のうえに、さらに大統領の失脚が加われば、国際社会での韓国の信用が完全に地に落ちてしまう。激怒した国民の怒りが朴氏に向かうことは明らかだ。

 

 但馬氏は「このままいけば、父母と同じ道、つまり暗殺という最悪の結末もありうるかもしれません。朴大統領に残された生き残りの道は、軍を掌握し、軍事独裁と言われた父をしのぐ独裁政権を樹立することです。憲法を改正して永世大統領になるしかないでしょう」と指摘した。

 

 奇想天外だが、まったくありえないシナリオではない。

 

「実は朝鮮民族を統治する一番の政治形態は独裁国家かもしれません。韓国が一番発展したのは朴正熙軍事政権の時代でした。北朝鮮がまさにそうです。崩壊が何度も叫ばれながらしぶとく金王朝は生き残っています。もっとも、韓国に独裁政権が誕生することを国際社会は許さないでしょうし、朴大統領にそれだけのカリスマ性があるとは思えません」

 

 やはり退陣せざるを得なくなりそうだ。