続発する高齢ドライバー事故に“特効薬”あるか?

2016年11月16日 07時00分

 高齢ドライバーの事故が相次いでいる。先月28日に横浜市で87歳の男が運転する軽トラックが集団登校中の児童の列に突っ込み、小学校1年の男児が死亡した。今月12日には東京都立川市の病院で83歳の女が運転する乗用車が歩道を歩いていた男女をはねて死亡させる事故も起きた。多発する事故を受け、政府は15日、事故防止対策の関係閣僚会議を開き、対策に乗り出すが、特効薬はないのか?

 この数日、高齢ドライバーが関係する交通事故のニュースを聞かない日はない。14日には茨城県つくば市の交差点で77歳の男が運転する軽トラックが軽乗用車と出合い頭に衝突し、軽乗用車の運転手が死亡した。11日には認知症の疑いがある80代の男が運転する乗用車が都内のコンビニに突っ込んだ。

 警察庁によれば、2014年に3600件余りあった死亡事故のうち、65歳以上の運転者が過失の重い「第1当事者」になったケースは26%も占め、この約10年で10ポイント近く増えている。

 警察庁は09年から、75歳以上の高齢者の免許更新時の認知機能検査制度を導入し、程度を3段階に分類。「記憶力・判断力が低い人(認知症の恐れのある人)」が交通違反を起こした場合、医師が認知症と診断すれば、免許取り消し処分を行ってきた。

 ただ、認知機能は急激に低下することもある。、現状をより的確に判断するため来年3月には改正道交法が施行され、「認知症の恐れのある人」は交通違反がなくても医師の診断を義務付け、認知症と診断された場合、免許取り消し、または停止などにする。

 こうした取り組みは功を奏すのだろうか。交通評論家の矢橋昇氏は「(運転)不適格者が今までより厳しくチェックされることは一歩前進ではある」と一定の評価をしつつも「今やっている認知症テストで、運転上の認知機能をどれだけ測れるのか、実際に車を動かしてもらわないと分からない。認知機能と同時にそれを適切に行動に移せるかどうかがセットになっての運転ですから、その検査を厳密にしなければならない」との見解を示した。

 高齢の運転者やその家族、周辺が「認知症じゃないか」と分かっていても現実を受け入れなかったり、カドが立つのを恐れて、指摘しづらい状況もある。防災アナリストの金子富夫氏は「地域防災対策の観点から車避難の対策訓練などを行い、地域が高齢の免許証所持者やその家族を把握し、危険運転の制御や相談できる環境をつくっていくことが大事になる」と指摘する。

 また警察庁は65歳以上の運転免許証所有者に免許証の自主返納を求めている。東京都や大阪府では返納者には、タクシーやバスなどの運賃割引や商店街での割引などお得なサービスを受けられるとアピールしているが、返納による喪失感や自己の尊厳にも大きくかかわってくる。また交通機関が充実していない地方では、車は欠かせないという事情もあり、返納へのハードルとなっている。

 金子氏は「返納することで得られるメリットが低過ぎる。タクシーや新幹線などのフリーパス10年分など驚くような手法を導入するべき。また交通ボランティア制度を導入し、運転をしなければならない高齢者に対し、無料かわずかのアルバイト代を支払う運転代行システムなども検討していくべき」と提言する。

 いずれにしろ根本には日本人の運転ルールの意識の低さがあるという。「そもそも日本人は運転に対して甘い。若いころからルール違反をやっている人が高齢になると間違いなく事故につながる。ヨーロッパはどこに行っても、小さいころから交通ルールを教えて安全教育をやっている」(矢橋氏)。一刻も早い対策強化が望まれるところだ。