町おこしのため大麻栽培をしていた鳥取県智頭町の大麻加工販売会社代表取締役、上野俊彦容疑者(37)らが、厚生労働省中国四国厚生局麻薬取締部に大麻取締法違反(所持)の疑いで逮捕されていたことが発覚し、首相官邸も揺れている。上野容疑者は産業用の大麻栽培の許可を県から得ていた。しかし、自宅に乾燥大麻88グラムを所持していたことから4日に現行犯逮捕。「他人からもらって使っていた」と使用を認めているが、この町おこしを安倍昭恵夫人(54)が支援表明していたというから大変だ。

 すくすくと育った大麻の前で笑顔で写真に写るのは、昭恵夫人とバンダナをした男性。この男性が「産業用大麻栽培者」の上野容疑者だという。昨年7月に昭恵夫人は智頭町を訪れ、上野容疑者の大麻畑を視察した。この様子は昭恵夫人のフェイスブックで紹介され、昭恵夫人は産業用の大麻文化の復活を雑誌などで訴え始めるようになっていた。

 上野容疑者は、いわゆるIターンで智頭町にやって来た。智頭町役場によると3年前に県から大麻栽培の許可を得ていたという。都道府県から栽培許可を得た業者が大麻取締法違反容疑で逮捕されるのは初めて。厚労省は近く、都道府県に対して栽培許可が適切かどうか確認するよう指示する方針だ。なお、同じ会社の従業員の男2人も同法違反容疑で現行犯逮捕されていた。2人の逮捕容疑は4日、智頭町内の自宅や車に乾燥大麻約1グラムをそれぞれ所持していた疑い。

 町担当者は「当時、町長が県知事や県関係者に対して、上野さんに許可を出してくれるようお願いして回っていました。(許可が出たのは)町長の言葉を借りれば『県が自分を信頼してくれた』ということ。それだけに町長は責任を感じています」とうなだれる。お世話になった町長の顔にドロを塗ったことになる。

 智頭町では昔からある伝統文化に光を当て町おこしをする取り組みをしていた。その流れで「麻はどうか」という話になり、町として上野容疑者を支援することになっていた。

「智頭麻を次世代に受け継ぐ」とする上野容疑者が育てていたのは麻薬成分が少ない産業用大麻草。繊維製品や食料品などを作り販売していた。厚労省によると、所持していた大麻とは別のものとみられる。

 戦後に規制されるまでは日本各地で大麻製品が愛用されており、昭恵夫人の言う大麻文化もこうした伝統のことを指していた。昭恵夫人が紹介したことで智頭町のアピールになったのは間違いない。

 現在、町にある大麻畑は町職員らで監視している。「よからぬやからが持って帰っても困る。不法侵入がないか見回っています。たとえ産業用とはいえ、法律では所持してはいけないんです」(町担当者)

 上野容疑者が持っていた吸うための大麻は、畑のものとは別と麻薬取締部はみているが「隠れて作っていたかは分からんです」(同)と疑い始めればきりがない。

 これまで町は大麻の普及啓発イベントを開いたり、大麻についての漫画を製作したりと、上野容疑者とともに町おこしをしてきた。「こういうことになってはもう麻で町おこしは無理。おしまいでしょうね」と前出担当者はため息をついた。大麻で町おこしは終わりを告げた。

 上野容疑者は智頭町だけではなく昭恵夫人をも裏切った。政府関係者は「まさか昭恵夫人も…なんてことはないでしょうが、有名人なんだから気をつけてほしい。脇が甘すぎですよ」と大弱り。

 フットワークの軽さが昭恵夫人の持ち味ではあるが大ごとになってからでは遅い。