タイの風俗“浄化”に軍政の影

2016年10月10日 09時00分

ひな壇の泡姫たちを見て選べるのが特徴だったが…

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】タイ・バンコクで最近、日本人に高い人気を誇るマッサージパーラー(ソープランド)が次々と閉鎖され、地元風俗業界に衝撃が走っている。

 ロリ系と少数民族ギャルで有名な店「ナタリー」が未成年を働かせていた容疑で摘発を受け、無期限営業停止を食らったのは6月。そして8月、政権を握る軍がより有利な新憲法の賛否を問う国民投票が行われ、これに勝利した軍政は、汚職撲滅や風俗産業壊滅に向け動きだすだろうといわれていた。

 そんな矢先の8~9月、優良店が軒を連ね、日本人が「バンコクの吉原」「温泉街」と呼ぶラチャダーピセーク通りで人気店が相次ぎ閉店。地元風俗通ライターが唇をかむ。

「閉鎖した一軒の『アムステルダム』は雑誌グラビアを飾る現役モデルも在籍する高級店。時々行われる会員限定のパーティーにメディア関係者として招待されたことがあるが、タイの有名芸能人や司会者も顔を出すほど芸能界にパイプがあった」

 巨大ジャグジー付きの広いVIPルームを擁し、仲間同士と何人ものソープ嬢を借り切って乱交する日本人が多かった「シーザー」も閉店。また冒頭の「ナタリー」と隣接する「エマニュエル」も潰れた。

 いずれも閉鎖理由ははっきりしない。現地発日本語ウェブマガジン「Gダイアリー」の町ル田マチオ編集長は「ナタリーは軍政の圧力によるもの。アムステルダムは店舗を売却したんだろう。シーザーもおそらく売却」と指摘。また「タイ人の中間層に人気のヌキ系スパにも軍の手入れが頻繁にあるらしい」という。

 常に地元客や日本人客であふれ、儲かっていたはずの人気店が続々と店を売却したのはなぜか?

「軍政は法の運用を変え、マッサージパーラーに高額な罰金あるいは税金を課すんじゃないかと、地元民は噂している。合法的に風俗店経営者の財産を没収する仕組みを作るんだとか。その前に、軍とパイプのない店は自発的に閉店し、商売を変えたり、土地ごと売り払ってマンションにするなど防衛策をとっている。結果、風俗業の“浄化”は進むだろう」(冒頭のライター)

 ラチャダーピセーク通りには、まだソープが数軒残っている。そのうちの一軒「ポセイドン」も日本人客が多く、併設レストランでは日本食が食べられる。「ウチは大丈夫だ」と従業員は言うが、ロビーに並ぶ泡姫は20人もおらず、通常の半分以下で客も少ない。摘発を恐れ、泡姫たちも客も逃げ出しているのは明らかだ。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。2年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。