ラオス人が心配する強引な鉄道工事の代償

2016年10月02日 09時00分

雲南省の山岳地帯を切り開く中国=ラオス鉄道

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】ラオスの首都ビエンチャン郊外には、たった3・5キロだけ電車が走る。隣国タイがつくったもので、国境線のメコン川を越える橋に鉄道も併設されたのだ。将来的にラオス国内への延伸を想定しつくられたが、今のところ進展ナシ。しかも一日わずか2本で、国際列車だが乗客はわずかだ。

 ラオス南部にも、フランスが植民地時代に鉄道を建設。メコン川の広大な流域で、中州に島が点在し滝や急流により物流が阻まれているため、鉄道輸送を考えたわけだが、数千の島々が浮かぶ流域だけに維持は難しく、放棄されてしまった。当時の蒸気機関車や廃線跡、路盤などが鉄道マニアに人気なだけ。

 そんなラオスに新路線が伸びそうだ。北部で国境を接する中国が、猛スピードで建設を進めている。「ビエンチャンと、中国雲南省の景洪の約420キロ間を線路で結び、旅客車と貨物を走らせる計画。中国側の資金援助で70億ドル(約7200億円)の建設費が賄われるとされているが、不透明な点も多い。昨年末に中国側から着工し、完成は2020年の予定」(現地在住ビジネスマン)

 雲南省の山岳地帯を道路と並行するように伸びる建設現場は、着工数か月とは思えぬほど、ところどころで陸橋やトンネルがつくられている。山肌をえぐり、森林を切り開き、少数民族の棚田を削り、危うい斜面に巨大な柱を立ち並べ、強引に鉄路を引いていくさまは、まさに圧巻。

 建設を担う中国を代表する巨大インフラ企業「中国中鉄」は、国内だけでなく東欧やアフリカなどでも鉄道や道路建設に携わる。親会社は鉄道を主体としたインフラ開発企業「中国鉄建」で、この2社が売上高で世界トップ2の建設会社だ。人民解放軍の鉄道部が前身で、国策として途上国にインフラ開発をセールスし続けてきた。

 その代償として、中国はアフリカから水やレアメタルなどの鉱物資源を大量搾取してきたといわれ、ラオス人は同じ危惧をしている。「鉄道が開通して貿易がはかどるかもしれないが、大量の中国人が乗り込んできて、ラオスのような小さな国はのみ込まれてしまうのでは…」(地元民)

 山岳地域の突貫工事には安全性の不安もある。ラオス側に工事が進めば、環境破壊も心配。建設予定地には手付かずのジャングルが広がり、エコツアーの人気スポットなのだ。“膨張する中国”を象徴する鉄路は、これを皮切りに東南アジア全域への延伸が計画されている。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。2年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。