“恥ずかしい画像”をついネットで送ってしまい、それをネタに脅される「セクストーション(性的脅迫)」の被害が、女性だけでなく男性にも広がっている。しかも、その手口は巧妙化し、なんと犯罪集団によってシステム化もされているというから恐ろしい。自分は大丈夫、なんてタカをくくっていると、とんでもないことになりそうだ。こんなネット社会の新たな危険性に、専門家は厳重な注意を呼びかけている。

 セクストーションとは「セックス」と「エクストーション(ゆすり)」を足した造語。先日、都内在住の30代男性A氏もこの被害に遭った。

 A氏が出会い系アプリで知り合ったのは、欧米ともアジアともつかない国籍不明の顔立ちで、英語を用いる自称24歳の美女。日本を観光中という美女と意気投合したA氏は、美女に求められウェブカメラでビデオ通話を行った。

 そのビデオ通話で「テレホンセックス」を持ちかけられたA氏はノリノリで下半身を露出。すぐに画面はシャットダウンし、直後、謎の番号から電話がかかってきた。

 A氏の場合はこれだけで済んだが、中にはやりとりの途中でダウンロードさせられた不正アプリによって、アドレス帳やSNSの情報などを抜き取られ「恥ずかしい映像を友達に拡散されたくなければ20万円を払え」などと要求されるケースもあっったというから恐ろしい。

 こうした手口は米国では2010年ごろから確認されていたが、近年は日本でも急増。14年には千葉県警が、不正アプリで男性のスマホから個人情報を抜き取り、現金を脅し取った恐喝容疑で男2人を逮捕。その犯行グループは中国を拠点にしていた。昨年春には兵庫県内で複数の相談が寄せられた。

 A氏は、相手がノウハウを持って組織的に行っていると感じた。

「僕が知り合った女性はひと言も発することなく、メッセージはすべてタイピングでよこしてきました。今思えば…ですが、女性は余計な証拠や情報を残さぬよう、笑顔で対応するだけ。仲間がメッセージのやりとりをしていたのでしょう」

 そのやりとりに関しても、確実に犯行を遂行するためのマニュアルがある様子だったという。

「向こうは、早い段階で『リック・ミー(なめて)』という要求をしてきました。『カメラに向かってなめるしぐさをして』ということで一応従いましたが、結果的には顔を鮮明に記録されてしまったわけです」(A氏)

 被害者は恥ずかしい動画を保存されているため、最初は周囲や警察などに相談できない。

「一度、金銭を払ってさらに要求されてやっと相談するケースもある。当局が把握できていない被害は、もっと多いはず」(捜査関係者)

 こうしたセクストーション被害について、ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「米国では女性が被害に遭うケースも確認されています。向こうは国土が広大なので、同じ国内でも物理的に距離があり、精神的なガードがより緩くなってしまうようです」と解説する。

 もちろん、脅迫されても、安易に従ってはいけない。仮に一度応じれば、さらにそれをネタにゆすられる危険性もある。

 もっとも、最初から怪しげなアプリやサイトを利用しなければ、巻き込まれることもない。

 井上氏も「基本的にエッチなことはネットでやらない。そういう部分はあくまで現実世界にとどめておくことが鉄則です」と、安易にエロを求める危険性を指摘した。