【奇祭】一年に一度だけ味わえない“煙”がふるまわれる茨城県加波山のキセル祭り

2016年09月09日 09時00分

巨大キセルを担いで山を登る

 まだ夏の気配を色濃く残す9月4日、茨城県石岡市と同県真壁町にまたがる加波山(かばさん)の山頂近くにある加波山神社で、長さ2・6メートル、直径25センチ、重さ60キロの巨大キセルを奉納する奇祭「キセル祭り」が行われた。

 この巨大キセルは、加波山神社の拝殿を出ると、そこから300メートルぐらい急斜面を登ったところにある「たばこ神社」まで、男衆によって担ぎ上げられた。たばこ神社での神事が終わると、この祭りに参加している地元の人たちはもちろんのこと、登山に来ていたハイカーや年配のアマチュアカメラマンにも“煙”がふるまわれた。

「1年に1度しか口にすることのできない味、脳裏に染みる。ありがたや、ありがたや」(60代の地元男性)

「うほー、こ、これはうまいですっ」(観光客)

 加波山神社は、筑波山などとともに連峰を形成している加波山にあり、ここには「国常立尊(くにとこたちのみこと)」や「伊邪那岐尊(いざなぎのみこと)」「伊邪那美尊(いざなみのみこと)」が祭られている。

 本殿と鎮座地は、さらに上に位置している加波山の頂上(709メートル)にあることから、登山客でもない限りめったに行かない場所となっている。

 ちなみに、たばこ神社には、たばこの耕作にゆかりのある「草野姫命」と「八雷神」「大己貴命」が祭られている。関係者に話を聞いた。

「この祭りは、今から60年くらい前に始められたものです。昭和28年、東茨城郡内原町(現・水戸市内原町)で、春先に雹(ひょう)害がありました。耕作者一同が加波山神社で五穀豊穣を祈願すると、たばこの葉はみるみるうちに回復して豊作となりました。翌年、等身大のキセルを奉納したのが、この祭りの始まりです。今日、キセルに詰めたのは、水府という種類のたばこ草です。今では、茨城県でこれを作っている農家は3軒となってしまいました」

 加波山神社に行くためには、石岡市内の中心部から3時間近く車を走らせなければならない。今どき、このような山奥でひっそりと行われている祭りというのも少ないだろう。