今月、東京都台東区千束に遊郭史専門書店「カストリ書房」がオープンした。店を構えたのは、かつて遊郭が立ち並んでいた街として知られる吉原で、当時遊郭を経営していた人の子孫から借り受けた。

 カストリ書房は「カストリ出版」初の直営店となる。同出版社は2014年に始動し、遊郭や赤線などの遊里史を専門に扱ってきた。これまでネット販売をメーンとしながら、直接契約した一般書店や古書店などで販売を行っていた。

 カストリ出版のユニークなところは、国会図書館、各大学の図書館に所蔵がなかった遊里史の資料を専門として、発掘および復刻を行ってきたことだ。

 その中でも「全国遊廓案内」や「全国女性街ガイド」はマニアの間でバイブルとされている。カストリ書房のオーナーである渡辺豪さんに話を聞いた。

「この店を始めるきっかけは販路が欲しかったこともあります。本の編集作業をメーンとしてやりたかったのですが、ネット販売などをやっていると、どうしても煩雑になってしまうんですね。ここで本を作って、ここで販売するのがいいなって思いました」

 吉原を選んだ理由は、もちろん遊郭として有名な場所だったからだという。

「古書業界でプレミアムになっている本も復刻して販売しています。ネットに載っている遊郭の情報などは、みんなでコピーして使い回しているものが多いんです。そのため、どんどんその精度が落ちていってしまいます。ちゃんと後世に残せるような本を作りたかったんですよね。みんなが集えるような場所にもしたいと思っています」

 今回、開店記念の特別商品として、全国の遊郭赤線跡及びその内部まで撮影した写真集「遊郭 紅燈の街区」(10万円、フルカラー、380ページ)が店内に置かれていた。渡辺さんが約1年間かけて取材撮影したもので1部限定。金額的になかなか手の出るものではないが、国会図書館にも寄贈しているので、一見の価値はあるだろう。

 また、カストリ書房では、他社の発行した書籍も取り扱っている。今後は、トークイベントや書籍販売会なども開催していくという。