台風10号で9人犠牲の老人ホーム 行政側と施設側の判断ミス重なる

2016年09月01日 16時10分

 台風10号は8月30日から31日にかけ、岩手や北海道に大きな被害の爪痕を残した。岩手県岩泉町では小本川が増水。濁流が岸を越えて高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」を襲い、9人が犠牲となった。岩手県内ではほかに2人が死亡。さらに岩泉町で2人が行方不明になった。北海道でも3人が不明になっており、警察などが捜索を続けた。

「楽ん楽ん」の被害は行政、施設側の判断ミスが判明した。岩手県内の河川の水位変化をモニターで監視していた県職員は、小本川の異変に気付いたが町役場に直接連絡せず、避難指示にはつながらなかった。

 小本川は支流も含めて数年ごとに洪水が発生し、住宅や農地が浸水被害に遭ってきた。2011年9月には大雨による氾濫で「楽ん楽ん」も床下浸水し、県は川岸の補強工事を検討していた。

 岩手県は県内312河川のうち28について、水位が一定の高さを超えると市町村に危険を知らせる対象に指定。小本川は対象外だったが、県河川課の職員は状況を表示するモニターで急激な水位の上昇を知り、出先機関には現場確認を求めていた。県河川課は「今までにない規模の台風だった。直接連絡すると岩泉町役場が混乱すると判断した」と説明した。

 岩泉町も、雨が激しくなった30日夕以降も、ホームのある地域に避難指示や勧告を出していなかった。伊達勝身町長は「残念ながら油断していた。避難指示を出していれば助かったかもしれない。申し訳ない」と情報収集不足を認めた。

「楽ん楽ん」常務理事によると、施設の車を高台に避難させた後の30日午後6時ごろ、ホームに戻ると、既に水が押し寄せ近づけなかった。ホーム内には入所者9人と50代の女性職員1人がいたが、電話がつながらず、警察や消防に救助を要請できなかったという。

 約11時間後の31日午前5時ごろ、水が一定程度引いたため、常務理事らがホーム内に入ると、9人は既に亡くなっていた。女性職員はうち1人を助けようと抱きかかえながら生存、救助された。