この世の中、さまざまな奇祭があるが、その中でもとりわけ風変わりなものがある。毎年、8月23、24日に茨城県古河市高野の高野八幡宮で行われている「ろうそく地蔵尊」がそれだ。この祭りでは、数千本のろうそくの炎が地蔵を包み込む。

 ろうそくの炎に包まれた地蔵は異様だ。小学生たちは「何あれー! どうしてお地蔵さんが燃えているの?」「これ火だるま地蔵じゃん!」などと驚く。

 ろうそく地蔵尊とは、病気やけがの治癒を祈願するための伝統行事で、自分の病気やけがのある部分にろうそくを立てると、地蔵が身代わりとなって、病を治してくれると言い伝えられている。

 ろうそくはここで売られていて1本100円。「全身コース」は、10本で1000円となっている。世話役にお金を渡せば、その部分にろうそくをあげてくれる。数本あげようと思って1000円札などを渡してもお釣りが出ないこともある。もちろん、自分でろうそくを持ち込むことも可能となっている。

 世話人によると、このような地蔵尊は、日本に二つとないもので、京都や四国にもろうそく地蔵尊と呼ばれるものはあるが、ろうそくの火が地蔵を包み込むものではないという。

 祭りが始まったのは江戸時代のことで、300年余り続いている。初代の地蔵は、江戸中期の享保4年(1719年)に建立されたが、長年にわたって人々の平癒祈願の炎に包まれていたことによって割れてしまった。現在の地蔵は、昭和11年(1936年)に再建された2代目となっている。同県結城市から来ていた土屋静恵さんは「ここに来るようになって4、5年目になります。この近くに友人が住んでいるので、教えてもらったのがきっかけでした。肩や腰などにろうそくをあげてもらいました。500円払いました。御利益は多分、あるとは思いますけど。でも、本当にありがたいですよね。今日は、会社の同僚と来ました」と話す。