中国 南シナ海の主権否定されても強気のワケ

2016年07月14日 07時00分

 南シナ海のほぼ全域で、中国が主張する主権や権益は国際法に反するとして、フィリピンが国連海洋法条約に基づき申し立てた仲裁手続きについて、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は12日、中国が管轄権を主張する「九段線」の内側の領海について国際法上の根拠は認められないと結論付けた。また、南沙諸島には排他的経済水域(EEZ)が生じる「島」は存在しないと判断。莫大な費用をかけて人工島を造成し軍備強化を図ってきた“無法者”中国はどう出る?

 南シナ海をめぐる中国とフィリピンの対立は2012年、フィリピンが実効支配してきたスカボロー礁に中国船が居座り奪い取ったことで表面化した。フィリピンが13年仲裁手続きを申し立て、南シナ海問題が世界各国の関心を集める中、中国による岩礁埋め立てが発覚した。

 中国は南沙諸島に造成したファイアリクロス礁に3000メートル級の滑走路や駐機場、大型船の停泊が可能な岸壁を建設。別の人工島にも灯台、レーダー、通信塔など軍事施設を次々と建設した。

 米国防総省の年次報告書によると、中国が15年末までに行った南シナ海での埋め立て総面積は約13平方キロで東京ドーム280個分におよぶ。今回の仲裁裁判所判断は、南沙諸島に「島」はないと明示。中国が莫大な費用をかけて造成した人工島は「島」と認定されず、EEZも生じないと判断されたわけだ。

 南沙諸島は1970年代に石油や天然ガスなどの海底資源の存在が分かると、フィリピンやベトナム、台湾なども領有権を主張している。

 中国事情に詳しい評論家の石平氏は「資源問題もあるが、第一は軍事です。中国は国際法を何とも思っておらず、力ずくでの実効支配を続けるため、今後も計画通りに軍事施設を増設し軍備強化する方針を変えない」と今後を展望する。

 実際、中国政府は仲裁裁判所が判断を出した直後から政府機関、メディアが一体となり大々的な批判キャンペーンを展開し、13日も続けた。

 国営中央テレビは12日午後7時の定時ニュースで冒頭から終了まで南シナ海問題一色。習近平国家主席が「南シナ海の島々は昔から中国の領土」と語る姿を放映した後に、裁判所の判断を「受け入れない」とする李克強首相の発言を伝えた。中国トップとナンバー2の最高指導部の反応をこれほど素早く報道するのは極めて異例だ。

 中国の強気には訳があるとも。

「国際社会の批判を浴びるのも想定内。このタイミングでフィリピンが政権交代し、中国との対話姿勢を示しているロドリゴ・ドゥテルテ大統領に代わった。インフラ投資や経済支援を約束し、フィリピンを取り込めるとのもくろみがあるため、外野がとやかく口を出すなという態度です。裁判所の決定を全く意に介していないのです」

 だが今回、仲裁裁判所が「九段線」を否定したことで、中国の領海主張の根拠が失われたことは事実。周辺国のベトナムやインドネシア、マレーシアなどでも、領海主張の動きが活発化する可能性もあり、南シナ海周辺がますます騒がしくなることは避けられそうにない。