ベトナム風つけ麺店「オバマの店」と大人気

2016年06月12日 09時00分

“オバマのつけ麺店”は連日大盛況

【アツいアジアから旬ネタ直送「亜細亜スポーツ」】先月の広島訪問で、被爆者と歴史的な抱擁を交わした米オバマ大統領は、その前の外遊先、ベトナム・ハノイでもベトナム戦争の悲劇を「多くのベトナム人、米国人が犠牲になった」と悼んだ。米大統領が現地でベトナム戦争について言及したのは初。日本同様、現地でも大ニュースとなった。

 ハノイ滞在中の5月23日夜、オバマ氏は庶民的な食堂に出没。SPを多数伴い、作家兼シェフの米国人アンソニー・ボーディン氏と夕食を取った。「ブンチャー」というベトナム風つけ麺が看板メニューの「ブンチャー・フオンリエン」という店だ。

 現地報道によると、店長は「米政府関係者とテレビのスタッフが来るので、撮影を許可してほしい」と言われたが、まさかオバマ大統領と思わず仰天したという。ブンチャーのほか、揚げ春巻とビールを注文。6米ドル(約660円)相当のお代はボーディン氏が払った。

 この店が今、ハノイで大人気。「あのオバマの店で食事を」と早朝から行列ができ、昼前にブンチャーは売り切れてしまう。近くのデパートに勤めるOLグループは、「一度は食べたいと思ってるんだけど、ランチタイムにはもう売り切れ。それも毎日よ」と残念そう。

 日本人も目にする。ハノイと、その東にある国際貿易港ハイフォン周辺に、日系製造業の進出が相次いでいるのだ。ハノイに現地オフィス、ハイフォンに工場を持つ水産関係の日本人出張者は「せっかく現地スタッフに連れてきてもらったけど、これだけ混んでたら仕方ない…」と諦め顔。ただ、食事できた客もできなかった人も、大体が店先で記念撮影していく。その写真をSNSにアップし、また人を呼ぶ。大変な“オバマ効果”だ。

 ベトナムのSNSをのぞくと、特に若年層でかつての“仇敵”米国を敵視する声は少ない。その背景には、ベトナムと中国の南シナ海領有権争いがある。中国を相手にするなら米国と共闘しよう、という意見ばかり。オバマ氏の庶民的な“つけ麺外交”も追い風になっている。

 ブンチャーはハノイの名物料理。米で作った太めの素麺「ブン」を、タレにつけて食べる。タレは店によって創意工夫がなされ、基本は魚しょうベースで甘酸っぱい。具は「チャー」という豚の薄切り炭火焼きや、豚のつくね。ボウルたっぷりのハーブと野菜が添えられ、入れ放題だ。日本におけるラーメン店と同様、ハノイではブンチャー店が軒を連ねシノギを削っているため、どの店も味のレベルは高い。

 ところで店のあるレバンヒュー通り一帯は、夜になるとカラオケ店のネオンがきらめくいかがわしいエリア。もちろんホステスが同席する店だ。腹ごしらえしたオバマ一行はそんな店で楽しんじゃ…なんてジョークも地元では飛び交っている。

☆室橋裕和(むろはし・ひろかず)=1974年生まれ。週刊文春記者を経てタイ・バンコクに10年居住。現地日本語情報誌でデスクを務め周辺国も飛び回る。2年前に東京へ拠点を移したアジア専門ライター。