首都圏直撃の大地震で餓死者も 専門家が“恐怖のシミュレーション”

2016年04月20日 06時30分

 こんな対応では「餓死者が激増する!」――。14日のマグニチュード(M)6・5を皮切りに16日未明にはM7・3の強い揺れが襲った熊本地震で、被災地からは救援物資が届かずSOSの悲鳴が相次いでいる。東日本大震災時にも見られたこの光景。近い将来、首都・東京を襲う直下型大地震や、名古屋、大阪を直撃するとみられている南海トラフ地震に見舞われた場合、いったいどうなるのか? 専門家に聞くと、浮かび上がったのは発災後の“恐怖のシミュレーション”だった。

 震度7の地震から4日後の18日、熊本、大分両県によると、避難者数は約9万4000人。各避難所ではいまだに水、食料の枯渇状態が続いている。

 一方、政府の被災者生活支援チームは被害が大きい熊本県益城町、南阿蘇村、宇土市に職員を派遣。米軍の新型輸送機MV22オスプレイが物資輸送を開始。政府関係者は「岩国基地から現地まで20分足らずで入れた。被災者のためにおにぎり10万個を運べます。安倍首相は東日本大震災の菅内閣とは対照的に、危機管理のあり方を理解していると評価が高いです」と話した。

 救援物資は全国から県内の拠点に集まってはいるものの、交通機能のマヒや人員不足で、末端の避難所や店舗まで行き届いていないのだ。

 5年前の東日本大震災でも救援物資は足りているのに、避難所までなかなか届かなかったことが問題となった。

 防災アナリストの金子富夫氏は「いくつもの支援組織を立ち上げても、現場は混乱するばかりです。自衛隊にも、救助とは別に大量の部隊を運用してもらわなければ追いつかない」と指摘する。

 熊本地震での避難者は一時20万人以上を数え、単純計算で1日60万食が必要となる規模だった。政府は3日分として確保する食料を、従来の90万食から180万食に倍増するとしたが、迅速に届けなければ“持ち腐れ”になりかねない。

 この熊本での混乱ぶりを見れば、人口過密の大都市で震災に見舞われた時は、恐ろしい事態が容易に想像できる。

 中央防災会議の試算では、都心南部直下のM7・3の地震が起きた場合の最悪事態で、死者は約2万3000人、全壊・焼失家屋は約61万棟、1都3県(神奈川、千葉、埼玉)で約800万人の帰宅困難者、約720万人の避難者が発生するとしている。

 多くの人が避難所に押し寄せることで、「収容能力を超える」「公園や空き地に多くの人が滞留する」と既にパンクする事態を想定したうえで、水や食料不足に陥るとしている。

「都は各家庭で飲料水や食料など3日間分の備蓄を呼びかけているが、とても足りない。また企業にも3日分の備蓄をするよう帰宅困難者対策条例を定めたが、従っているところは3割ほどしかない。全国から食料や水は届くでしょうが、首都圏は交通インフラが破壊されれば運搬もままならないし、1日で1000万食分にもなれば、供給する側もパンクする。備蓄は1週間、10日どころか1か月分はあった方がいい」(金子氏)

 飲料水や食料だけでない。今回の熊本地震でも深刻な事態に陥っているのがトイレ問題だ。

 地震発生直後、ツイッター上は「水が出るうちにおふろにためてください。いろいろと役に立ちます」との書き込みであふれた。

 断水すれば、トイレの水も流れなくなる。熊本では各家庭や避難所で流しきれない汚物の滞留や処理問題も起きている。

「自然の少ない首都圏では森林や河川でというわけにもいかない。腐ってもいい水ですから20リットルのポリバケツに2つぐらいためて、置いておけばいい。都は飲料水の備蓄だけで、雑排水などの肝心なことは呼びかけていない」(金子氏)

 中央防災会議では断水や停電、道路や鉄道は復旧まで最大1か月と試算している。人口過密の首都圏を直撃する災害は未曽有の事態になるのは明白。

「関連死や餓死者が激増するのではと心配する」(金子氏)

 震災後にも、被災者に容赦なく襲い掛かる餓死の恐怖。生き残るためには政府任せにはせず、日ごろから備蓄を怠らないことが肝心だ。