14日から相次いで起きた熊本地方を襲った地震で被害を受けたのは熊本城だったが、そのすぐ下に立つ熊本大神宮(熊本市)も地震の犠牲となった。

 16日未明に発生した震度6強の地震によって、城の石垣とやぐらが崩れ落ち、その下にあった神社の社務所が潰されたのだ。

 落下してきた巨石の勢いを物語るように、社務所の屋根が重みで地面に付きそうになっている。幸いなことに、社務所の隣にある拝殿と本殿に影響はなかった。大惨事にもかかわらず、毎月17日に行われる「月次祭(つきなみさい)」は17日も実施された。

 宮司の岩下通弘さん(54)は「最初の地震(14日夜)のときは、少し壁が倒れただけでしたが、今回のには驚いた。ケガ人もなく、本殿と拝殿が無事なのは神のご加護だと思います」と語る。

 実は神社で働く女性に“ご加護”があった。福島敏子さん(68)は社務所に隣接する小部屋で寝泊まりしていた。ここは駐車場の管理事務所で石垣が落ちてきたとき、この部屋で福島さんは知人女性と眠っていたのだ。

「揺れるのが怖かったわ」と振り返る。寝泊まりする部屋を出ると、すぐ社務所。眠っていた場所から、潰れた場所まで3メートルもない。生きているのが奇跡だ。

 これだけの事態であれば、屋根に穴が開いたり、建物が潰される音が聞こえてもよさそうだ。だが不思議なことに「隣の様子には全然気付かなかったの。4時ぐらいに外に出て、見たらこれでしょ。ビックリしたわよ」と語る。

 恐怖体験をした場所からは離れたいと思うのが人情だが、建物の中に平気で入っていくからたくましい。「普段は社務所の中って暗いんだけど、天井に穴が開いちゃったから明るいわ」とノホホンとしたもの。「ラッキーよね。私は毎日ここにいるもの。神様のおかげ!」。再建も早そうだ。