南極横断目前の探検家が死亡 100年前の悲劇乗り越えられず

2016年01月28日 09時00分

 繰り返された南極の悲劇――。英国人の元将校で、世界初の単独無支援南極大陸横断を目指していた探検家、ヘンリー・ワースリー氏(55)が、ゴールまで残り約50キロの地点で力尽き、命を落としたことが明らかになった。

 米CNNなどの報道によれば、ワースリー氏は約1460キロを踏破したものの、出発71日目の22日、極度の疲労と脱水状態に陥り、飛行機でチリ・プンタアレーナスの病院に搬送された。

 医師の治療を受けたが、細菌性の腹膜炎で亡くなった。

 25日に死亡を明らかにした妻のジョアンナさんによれば、ワースリー氏は英軍の傷痍兵士らを支援する団体「エンデバーファンド」に対し10万ポンド(約1680万円)の寄付金を集めるために南極横断に挑戦した。

 この挑戦は1914年から16年にかけ、英探検家アーネスト・シャクルトン氏が南極横断に失敗し100年が経過したのを契機に行われた。

 シャクルトン氏の率いた「帝国南極横断探検隊」は英国を出発後、南極大陸まで約300キロの地点で氷の海に行く手を阻まれ漂流。結局、1年8か月もの間、気の遠くなるような苦労をしながらも、最終的には27人の隊員を含めた全員が救出された。

 この一件は、シャクルトン氏のリーダーシップや隊員たちの忍耐をたたえる美談として、これまで何度も書籍や映像化されている。だが、その裏で、シャクルトン氏たちの部隊への食料支援に派遣された「ロス海支隊」は10人中、3人の隊員が命を落としている。

 ワースリー氏は今回の挑戦で、当初の目標金額を集めるのに成功したが、一方で、100年前の悲劇を完全に乗り越えることはかなわなかったともいえる。

 それでも同氏に対しては、英ウィリアム王子(33)や弟のヘンリー王子(31)らが哀悼の意を表明。英雄としてその名が語り継がれることになりそうだ。