もはや風物詩になっている“荒れる成人式”を徹底リポート――。成人の日の11日を含むこの3連休に全国各地で成人式が行われた。今年も目立ったのは、奇抜な格好で大暴れするヤンチャな新成人たち。以前からトップクラスの“ヤバさ”で知られる福岡・北九州市の成人式に本紙は潜入。奇抜な衣装、瓶で頭をかち割る流血ファイト、逮捕…。なんでもありの“大人の儀式”は来年以降も続きそうだ。

 北九州市の成人式は10日、JR小倉駅近くのメディアドームで開かれた。同市出身の30代男性は「約10年前からキンキラキンの羽織はかまのワルや、花魁(おいらん)姿の女性が徒党を組み、会場で大暴れするようになった」と話す。

 市は「ふさわしい服装」を求める通達を事前に出していたが、ヤンチャ者がそんなことを聞くわけがない。

「基本的に中学校区の同輩が10~20人単位で集団を作る。先輩や後輩も、彼らが大暴れする姿を見守るから、スタイルは次代へ脈々と継承されていく。自分の代でやめるわけにはいかない」(同)

 式典開始の数時間前から、会場外の芝生広場はド派手な集団で埋め尽くされた。酒を飲んで「戸畑!」「八幡!」「けんじ!(仮名)」など出身エリアや人名を叫ぶ。胸をはだけた花魁姿の女性グループも近くでシャンパンを回し飲み。午前11時半の式典開始後も外で騒ぎ続ける。

 金髪リーゼントの若者は「ヤクザとか暴走族もいるけど、学生や土木とかまともに働いてるほうが多い。僕の頭も昨日、黒から金に染めた」と語る。

 目的は1つ。「目立つこと」(同)だ。テレビカメラを向けられると、生放送かどうかを確認。VTR収録とわかるや、仲間内で相談を経てから悪ぶった表情を作り「なめんな!」「戸畑じゃ!」などと叫ぶ。頭にバービー人形をつけた女性や、裸で羽を背負った若者が「固定観念を覆す」と異色の格好で現れたりもしたが、すべては目立ってナンボのようだ。

 式典は午後1時に終了したが、警備員は「今年もこれから警察との追いかけっこが始まるぞ」とつぶやいた。そして各所で小競り合いが発生。中学時代にぶつかり合った者同士が同じ場所にいれば、酔いが回った頃合いで過去の因縁に火がつく。「やりやがった!」という大声の先では、顔中傷だらけで衣装を血まみれにした金髪の若者が「囲まれてリンチされた」と悔しそうに吐き捨てていた。

 ついに一線を越える事態が起きた。メンチを切り合っていた若者が、酒瓶で相手の頭をぶん殴ったのだ。記者や取り巻きの眼前で行われた凶行に、男たちはヒートアップ。あわや集団抗争劇になろうかというところで、警察が介入して騒ぎは収まった。

 パックリ割れた左側頭部から流血する男性は「大丈夫、大丈夫」とたばこを吸っているが、警察から年齢を聞かれて「19歳」と答えたために「たばこはダメじゃないか」と叱られた。男性を介抱していた赤髪の男が腹を立てて、警察官の体を「なんやオラ!」と手で押した。「公務執行妨害だ!」と7~8人の警察官が瞬時に取り押さえる。血気盛んな別の仲間が、逮捕者を“助けよう”と騒ぎに飛び込むも「子供生まれるんだよ! なんしよるの!」と新妻の花魁に止められていた。赤髪は引きずられて「被疑者」としてパトカーに連れ込まれた。小倉北署によると、酒に酔っていたという。

 午後3時を回ったころ、広場から人が消えた。ドンチャン騒ぎは来年も続く――。