旭化成は8日、子会社の旭化成建材がくい打ち工事のデータを改ざんした問題で、外部の弁護士で構成する調査委員会の中間報告書を発表した。

 一連の問題は、横浜市都筑区のマンションの棟と手すりに段差が生じたことで発覚した。報告書によれば、データを改ざんした現場責任者のA氏は、自身が勤める施工会社の先輩らが以前からデータ流用をする姿を見かけており、「元請会社や先輩に相談をすると、『電流計データが取れなければどうにかすべき』といった趣旨のことを言われる」という状況が何度かあったという。A氏は横浜のマンション現場の工事以前からデータ流用を当たり前と考える環境に長く身を置いていたこともあり「『データを取れなければデータ流用をする』習慣が身についてしまっていた」とした。

 そうした背景に加え、現場が多忙であったこと、現場責任者として同工事の工法を行うのが初めてだったこと、他のオペレーターとのコミュニケーションがうまくいかなかったことなどがA氏の実情としてあったと報告書は指摘した。また、旭化成建材に対しては「管理監督機能・教育機能を十分に果たしていなかった」とし、体制に問題があったことを強調した。

 以前から指摘されていたが、現場レベルでデータ改ざんが当たり前のように行われていたという事実はあまりに重い。さらに、下請けに現場を丸投げして、まともに管理をしないという建築業界の闇も改めて浮き彫りになった。

 旭化成の浅野敏雄社長は「早急に再発防止に取り組み、信頼回復に全力を尽くす」とのコメントを発表。月内に責任の所在や再発防止の具体策などを盛り込んだ社内の調査報告書をまとめるが、今回の問題がひき起こした世間のマンション不信は簡単に払拭できそうにない。