菅直人元首相(69)が安倍晋三首相(61)を相手に名誉毀損で東京地裁に訴えた裁判の判決が3日に出され、菅氏の敗訴となった。東京電力福島第1原発事故の対応をめぐって、当時の安倍首相はメルマガで「海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです」と発信していた。

 菅氏は「中断の指示は出していない」と虚偽だとして訴えた。実際に菅氏は、そもそも海水が注入されていることも知らず、中断もなかったことが分かっている。

 判決を出したのは永谷典雄裁判長。「注入を中断させかねない振る舞いが菅氏にあった」「記事は事故対応の詳細が判明する前に発信されていた上、菅元首相の資質や政治責任を追及するもので公益性があった」などとしている。

 3日夕に会見した菅氏は「事実誤認がある。東京高裁に控訴する」と述べた。代理人の喜田村洋一弁護士も「中断させかねないということは中断していないということ。根本が間違っている」。

 また、詳細が判明する前の発信だから“デマでもOK”とも読み取れる。喜田村氏は「名誉毀損をなんであるかを理解していない判決」と首をかしげる。まるで裁判所が安倍政権に配慮したかのようだ。「そこは分からないと言うしかない」(菅氏)

 菅氏が返り討ちに遭った一方、安倍首相にもブーメランだ。永田町関係者は「安倍首相はマスコミ報道に法的措置をちらつかせることが多い。今後はやれなくなるんじゃないか」と指摘。週刊誌が健康問題を報じたときも法的措置をチラつかせたが、首相の健康情報は公益性が高いといえよう。安倍首相は「真実の勝利」としているが、自身の首も絞めた。