政府が20日に開いた国家戦略特区諮問会議で、自家用車をタクシー代わりに提供する「ライドシェア(相乗り)」を特区で認める規制改革方針が決まった。安倍首相は「外国人を積極的に受け入れる自治体の取り組みを後押しする」と述べた。

 営利目的で客を運ぶ車は行政の許可が必要で、現在ライドシェアは規制がかけられている。政府は個人宅に観光客が宿泊する「民泊」も拡大させ、訪日観光客を増やす狙いだ。

 ライドシェアは海外で普及したスマホアプリのサービスで、ドライバーとして登録した一般の車を乗車希望者がGPSで検索し、目的地まで乗せてもらうもの。今年2月には米ウーバー社が福岡で実験を行った。

 だが、同サービスは現状では実質的に「白タク」にあたる。福岡での実験は、乗車は無料で、ドライバーにはデータ提供の対価として報酬が払われる仕組みがとられたが、地元のタクシー会社などは猛反発。実験開始から1か月足らずで国交省の指導が入った。

「普及すれば渋滞解消や飲酒運転撲滅にも一定の効果はあるのかもしれない。ただ、強盗や交通事故、約束ほごなどのトラブルが発生した時の責任の所在について国は考えているのか。ただでさえタクシー業界は近年の規制緩和で苦境。タクシーが潰され、そのようなサービスしか残らなくなってしまうと問題はある」(運輸業界関係者)

 同サービスには海外でもタクシー会社が猛反発している。地方での高齢者の交通手段不足解消としては期待を寄せられているが「高齢者がスマホを使いこなして配車をしたり、過疎地でドライバー登録する人を安定して確保できるものなのか」(前同)とその効果には疑問符がつくとも。

 来年1月からの実施が東京・大田区で認められた民泊についても衛生や安全などの問題がつきまとう。一口にサービスの多様化といっても実現までにはまだ山がありそうだ。