消費者庁は6日、マイナンバー制度の関係者をかたる不審な電話を受けた南関東の70代女性が9月までに、現金を支払わされる被害に遭ったと発表した。制度に便乗した「劇場型詐欺」とみられ、実害が確認されたのは初めて。

 同庁は明確な被害金額を明らかにしていないが、数百万円以上という。5日に番号通知が始まり、不審電話が増える恐れがあるとして、あらためて注意を呼び掛けた。

 消費者庁によると、女性は国の関係機関の相談窓口を名乗る人物から、電話で偽のマイナンバーを伝えられた。その後、別の男性から「公的機関に寄付をしたい」「マイナンバーを貸してほしい」と連絡があり、「寄付への協力なら」と考えて教えたという。

 さらに寄付を受けたとする機関を名乗る人物から連絡があり「マイナンバーを教えたことは犯罪に当たる。記録を改ざんするための金銭がいる」と要求され、女性は郵送と手渡しで2回にわたり支払った。

 消費者庁などは「番号通知や手続きで、行政機関が口座番号や資産の状況などを聞くことは一切ない」として、絶対に応じないよう呼び掛けている。それでも今後、高齢者を狙ったマイナンバー詐欺が増えそうだ。

 詐欺研究家の野島茂朗氏は「マイナンバーに税金や保険が連動すると、税金、介護サービス利用料の未払いと延滞金、施設の損害賠償請求と称して、親戚や兄弟が介護施設にいる高齢者はだまされるでしょう。ブラック介護業界で再就職できなくなった職員は、介護施設の利用者の個人情報を持ち出して詐欺グループに入る可能性は高いです」と語る。しかも、詐欺グループのような犯罪集団にはマイナンバーが与えられない。

「区民税、市民税の悪質な滞納者は、区長や市長の職権で住民票が抹消されます。つまり税金を払わないような犯罪集団にはマイナンバーは届きません。そんなマイナンバーが届かないやからが、真面目に長年納税してきて、マイナンバーを受け取った老人たちを食い物にするのはマイナンバーの恐ろしさかもしれません」と野島氏は指摘する。