ロシアによるウクライナ侵攻で、核ミサイル発射が危ぶまれている。そんな中、1週間続く核戦争が起こった場合、50億人が死亡する可能性があるという研究結果が発表された。米ラトガーズ大学の研究チームが核戦争の影響を推計。英科学誌「ネイチャー・フード」に掲載され、複数の欧米メディアが報じた。

 国連人口基金の「世界人口白書2022」によると、現在、世界の人口は79億5400万人に達している。

 研究チームによると、核兵器による直接被害よりも、爆発によって引き起こされた火の嵐から大気に舞い上がる煤煙の量が深刻な問題だという。太陽の光がさえぎられることで、寒冷化し、農産物が育たなくなり、食料不足になるというわけだ。

 推計では、インドとパキスタンの戦争では、世界の農産物生産量は5年以内に推定7%減少し、最大で25億人が死亡する可能性があるとみられる。最悪の推計としては、米ロ戦争では3~4年以内に生産量が90%減少するとみられ、世界的な飢饉の影響により、50億人が死亡する可能性があるという。特に英国、米国、ドイツ、フランス、中国などは2年目までにほぼ全員が死亡するとしている。

 一方、アルゼンチンやオーストラリア、パナマ、パラグアイ、ハイチなどは、小麦などの農産物が豊富なため、死亡者ゼロとみられている。

 ラトガーズ大学環境科学部気候科学のアラン・ロボック教授は「農産物がある国に、飢えた難民が押し寄せてくることは間違いない。私たちは核戦争が起こらないようにしなければなりません」と指摘している。

 農林水産省によると、日本のカロリーベースの食料自給率は38%。危険極まりない状況だ。