SNSで外国人などを装い、恋愛感情を抱かせる国際ロマンス詐欺の手口で現金をだまし取ったとして、大阪府警に詐欺容疑で国際手配された住所職業不詳の森川光容疑者(58)が、ガーナの捜査当局に身柄を拘束されたことが1日、分かった。近く日本に移送するなどして逮捕する方針。それにしても、なぜガーナに? 専門家が分析した。

 森川容疑者は被害総額4億円に上る詐欺グループの指南役とみられ、2019~20年には仲間と共謀して米国人女性ライターなどになりすまし、男性2人に「口座が凍結された」などとうそをつき、計150万円をだまし取った容疑が持たれている。

 府警によると森川容疑者は18年8月からガーナに滞在していたが、今年2月に旅券が失効。7月にガーナ当局が不法滞在容疑で身柄を拘束した。

 なぜ森川容疑者は潜伏先としてガーナを選んだのか。ITジャーナリストの井上トシユキ氏は「中国がアフリカに肩入れするようになってから、ガーナにも大手通信会社が販売拠点を置くなど、先進国並みのネット環境が整ってきた。それに伴い、欧米や日本人の組織がガーナで『王族が自国の平和のために募金を募っている』などといった偽メールでお金をだまし取る詐欺事件が頻発し、グループをかくまう組織も増えてガーナは国際的ネット詐欺の拠点になりつつあった」と話す。

 森川容疑者は5月の公開手配以降、5回にわたり自ら府警に電話で連絡し、潜伏先まで伝えたことが身柄拘束につながったようだ。なぜ、あえて自分の居場所を明かしたのか。井上氏は「ガーナ当局に逮捕された場合、言葉が通じない中で、どんな処罰をされるか不安があったのでしょう。日本なら詐欺事件であれば命の保証はされるでしょうし、府警からの要請となれば、国と国との要請なので、ガーナも拘束中に手荒いことをしないはずですから」と身の安全を第一に考えた上での判断だったと推測。

 府警が認定した被害者は30~70代の男女65人で、そのうち30人の計約670万円分を立件。さらに日本人やガーナ人など15人を逮捕、書類送検している。だまし取った金はマネーロンダリング(資金洗浄)され、大半はガーナに送金されていた。