青森の歌う「花嫁人形」の怪

2015年08月04日 06時00分

“歌う”として地元で話題になっている花嫁人形(加工は本紙)

 青森県つがる市にあるK寺の人形堂には、ガラスケースに納められた「花嫁人形」が祭られている。結婚しないまま亡くなった人たちが“あの世”で結婚できるようにとの思いから親族が寺や地蔵尊に奉納する人形なのだが、終戦から70年を目前に、この人形に“異変”が…。なんと参拝客が帰った後、人形たちが歌いだすのだという。

 郷土史家の男性(68)は「青森県にある花嫁人形を数多く見てきましたが、このような現象を目の当たりにするのは初めてのことです」と語り始めた。

「戦争に行って亡くなった兵隊さんの遺影に寄り添っている女性の人形が、蚊の鳴くような声で歌うようになったのです。初めは空耳かと思っていたのですが、近くに寄ってみると、ちゃんと歌っているのです。童謡のようなものが多いですね。兵隊さんの遺影が並んでいる所は、その兵隊さん同士が話をすることもあります」

 お参りに来た人たちが帰る夕方近くになると、このような現象が起きるのだという。さらに怪奇現象は続く。

「いくつかの人形の髪の毛が伸びるようになりました。親御さんか親族の方が、はさみを持って来て、伸びた髪の毛を切っていることがあります。若くして亡くなった兵隊さんは、やっぱりこの世に未練があるのでしょうか。私はいつもそっと手を合わせています」(同)

 花嫁人形は、結婚することができないまま亡くなった人たちを“あの世”で結婚させてあげることを目的として、親や親族が寺や地蔵尊に奉納する人形。もともとは、戦争に行って亡くなった息子の供養をするために、その親によって始められたものだ。

 亡くなった男性が軍人の場合は、軍服姿の写真や鉛筆画などの遺影と女性の人形、もしくは夫婦人形をガラスケースの中に納める。この時代に納められたものは、紋付きはかまや和服を着ている夫婦人形や白無垢姿の日本人形、細身の角巻人形がその大半を占める。

 郷土史家の男性は「人形堂には800体くらいの花嫁人形が祭られています。お金のない戦時中にそのようなことをやるのはさぞかし大変だったことでしょう。ガラスケースの中には塔婆が納められているものもあります。そこには仏様の名前や亡くなった日にち、住所などが書かれています。その手前に貼られている白い札に書かれているのが名前です。誰のものかはすぐ分かるようになっています」と語る。

 人形堂は増改築を繰り返していることから奥へ奥へと伸びている。ここには熱気がこもっていて、どことなく重たい空気が漂う。

「花嫁人形の中には、病気や交通事故で亡くなられた方のもの、自害された方のものもあります。みなさん、若くして亡くなった独身の方ですね。生前、車やバイクが好きだった方にはプラモデルやミニカーが納められています。納めるときの様式に決まりはなく、日本人形でなくてもいい。振り袖でも何でもいいのですが、納める人は白無垢を選んできますね。最近は、納める人が減ってきていますがね」(同)

 青森県の津軽地方には「カミサマ」と呼ばれる民間の巫女がいる。山ごもりや滝の修行などを経て、身につけた霊能力で、病気や様々な困難、精神的変調などで悩んでいる信徒や依頼者の依頼に応えることを職能とする女性だ。20年くらい前まではこのカミサマが、病気や悩みごとの相談に訪れる信者や依頼者に、花嫁人形を奉納することを勧めることもあったようだ。

 15日、日本は終戦70年の節目を迎える。戦争で亡くなった若い兵隊さんと、花嫁人形は何を伝えようとしているのか。

 

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