【小型機墜落】「左旋回」の謎 なぜ住宅街に飛んでしまったのか

2015年07月28日 06時30分

調布飛行場を離陸した小型機が墜落した現場

 墜落直前に異変! 26日午前11時ごろ、東京・調布市の住宅街に5人乗りの小型機が墜落。操縦していた機長の川村泰史さん(36)ら3人が死亡した。エンジントラブルが原因と見られる。警視庁捜査1課は業務上過失致死傷の疑いで捜査を開始した。疑問が残るのは、同じ墜落でも直進すれば多摩川、右に旋回すれば緑地が広がっているのに、なぜ住宅地のある左へ進んだのか。いったい上空で何が起きたのか――。

「熱い」「誰か助けて!」。まさに地獄絵図――。墜落した住宅から聞こえるのは女性の叫び声。家の前では母親が「娘がまだ中にいるんです!」と訴え、救出のために自宅に入ろうとするのを近隣住民に制止されていた。この事故で機長の川村さん、搭乗員の30代男性・早川充さん、そして墜落現場の住宅に住む鈴木希望さん(34)とみられる遺体が発見された。

 近隣に住む50代女性は「彼女は犬が大好きでトリマーをしていた。この日も家には9匹くらい犬がいて、事故直後、そのうち1匹を2階の窓から外に放り投げていた。まだ若いのに…」と沈痛な面持ちで語る。

 このほか、残りの搭乗員と住民の合わせて5人が重軽傷を負った。そのなかにマスコミ関係者も含まれているとの情報もある。

 操縦していた川村さんは飛行キャリア1500時間のベテラン。新関西国際空港会社が2013年5月に開いたセミナーでは、講師を務めたほどだった。

 パイロットの腕は“折り紙付き”だったが、今回、墜落した「パイパーPA46」は04年10月27日に、調布飛行場から札幌・丘珠空港へ着陸後、再離陸を試みるも失敗したこともある機種。この時は、けが人はなかったが、国の航空・鉄道事故調査委員会(現運輸安全委員会)から「航空事故」に認定された。また、05年7月にも自衛隊機に異常接近し、事故調査委員会から事故につながりかねない「重大インシデント」に認定されたこともある。

 それだけに住民からは「いわくつきの飛行機だったんじゃないか!」と怒りの声も。

 事故原因については現在調査中だが、航空事故調査官によると、事故機は前部だけが広く焼損。何らかのエンジントラブルが発生した可能性が高いとみられる。

 それでも墜落直前の動きにも疑問が残る。離陸から2分後にはトラブルが発生し、川村さんが墜落の危険性を察知したとしたら「その場合、被害を最小限にとどめるために、万が一の墜落場所は川や山など人けのないところと決まっている」(航空関係者)。

 しかし、事故機は住宅街に向かって左旋回した。これにかつて飛行場に勤めていた60代男性は首をかしげる。

「住宅街の上は飛んではいけないというルールがあった。そのまま真っすぐ飛び、高速道路を越えれば前方に多摩川がある。右に旋回すれば味の素スタジアム周辺の緑地がある。少なくとも住宅街に突っ込むよりマシ。なぜ左に旋回したのか…」

 軍事ジャーナリストの神浦元彰氏は「離陸直後にエンジントラブルがわかり、調布飛行場に引き返そうとしたのではないか。操縦ミスを指摘する声もあるが、離陸して間もないトラブルは高度も出ていないし、とっさの判断力を求めるのは酷。ハンドルが利かない場合もある。上空で何が起きていたかは、助かった乗組員の証言でわかるでしょう」と話す。

 1980年8月にも調布飛行場を離陸した航空撮影会社の小型機が墜落。その時は住宅街の上を通過し、市立調布中学校のグラウンドに落ち、パイロットとカメラマンだけが死亡したが、前出の60代男性は「空港に引き返そうとしたのか、35年前と同じように中学校のグラウンドに落ちようとしたのか…。調布飛行場は小型機の訓練にも使用されていて、敷地内では事故もちょこちょこ起きていた。今回の事故を機に安全面について議論すべきだと思う」と力説する。

 事故原因の徹底究明が求められる。