お笑い芸人の水道橋博士氏(59)が、日本維新の会代表で大阪市長の松井一郎氏(58)から名誉を傷つけられたとして、550万円の損害賠償を求められた訴訟の第1回口頭弁論が30日、大阪地裁(冨上智子裁判長)で開かれた。松井氏から訴訟をチラつかされた時に「恐怖心を感じた」という博士氏だが、裁判では徹底抗戦の構えを見せながらも「劇場型にしたい」と主張。その源は、たけし軍団で培われた“芸人魂”にあるようだ。

博士氏は7月投開票予定の参院選に比例代表で出馬表明している。そんな中での裁判となった。

 博士氏は「反“維新”タイガース」と名づけたトラ模様のマスク姿で、衆院議員の米山隆一弁護士と入廷。原告側は松井氏は出廷せず、代理人3人が出廷した。弁論では明らかに松井氏らしき人物がいないにもかかわらず、博士氏が「松井一郎さんはいらっしゃらないのですか? マスクをしてるので分からない」と原告側に確認し、傍聴席から笑い声が漏れる場面もあった。

 事の発端は、博士氏の2月13日のツイートだ。「【維新の闇!】大阪市長・松井一郎の経歴を調べたらヤバかった!」と題したユーチューブ動画に、博士氏が「これは下調べが凄いですね。知らなかったことが多いです。維新の人たち&支持者は事実でないなら今すぐ訴えるべきだと思いますよ(笑)」とツイート。

 これに松井氏が「水道橋さん、これらの誹謗中傷デマは名誉毀損の判決が出ています。言い訳理屈つけてのツイートもダメ、法的手続きします」と警告。3月31日に「原告の『強姦疑惑』『経歴ヤバすぎ』等が事実であるという本件投稿について、一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方をした場合、一般の閲覧者は、あたかも、原告が『過去に女性を強姦した』という本件犯罪事実が事実であるかのような印象を受ける」として提訴した。

 弁論後、博士氏は「今回、松井大阪市長に僕自身が投稿したツイッターに関して、『訴える』というような文言でツイートを書かれた。心臓がバクバクするような恐怖感を感じた。僕がユーチューブをつくったわけではない」と話し、「松井一郎市長によるスラップ訴訟だ」として徹底抗戦を主張した。

 裁判は1年以上続く見込みだが、お笑い芸人らしく「裁判は劇場型でやりたい」とニヤリ。この日の公判にも、ワイシャツ・ネクタイの正装とアブドーラ・ザ・ブッチャーの格好の両方を用意していたそうで、「どっちがいいのかと思ったが、それくらい楽しませる劇場型の裁判がしたい」と語った。

 恐怖を感じるほどの裁判を「劇場型にしたい」と考える根底には、たけし軍団で培われた芸人としてのプライドがある。

 1997年に偽造免許写真の話題で1面を飾った本紙を取り出し、「僕はお笑い芸人だから、形式に対して『何が悪いんだ?』ということにチャレンジングです。僕は、社会彫刻的なお笑いと呼んでいますが、被害者はいない。朝、新聞を見て、こういう写真が出た時に、みんな『バカだな』と笑ってくれる。そういうことを目指した確信犯です。でも、書類送検された時に『模倣犯が出るから』と警察から指導が入って、この写真が出なくて悔しい思いをした。東スポだけがこの写真を1面でやってくれた。コメディアンとしては本当にうれしかった」と明かした。

 会見後には早速、松井氏の“居城”の大阪市役所を訪問し、ファイティングポーズ。「僕は一度食らいついたら離さない。謝るまでやります」という博士氏がどんな“劇場型裁判”を繰り広げるのか注目だ。