学校法人「森友学園」の国有地売却問題を担当していた元財務省近畿財務局職員・赤木俊夫さん(54=当時)が、佐川宣寿元国税庁長官(64)の支持で決裁文書改ざんを強制され自殺に追い込まれたとして、妻の雅子さん(51)が佐川氏に損害賠償を求めた訴訟の口頭弁論が25日、大阪地裁(中尾彰裁判長)で開かれた。

 原告側は佐川氏や財務省の職員4人の証人尋問を求め、弁護側は「公務員は個人の責任を負わない」と請求の棄却を求めていたが、裁判所は尋問を認めない決定を下した。

 原告側の松丸正弁護士は「国は認諾、佐川は一切語らない。尋問も採用されない。真実が明らかにならないまま終わろうとしている」とぶぜんとした表情。生越照幸弁護士も「公務員は『国の捜査がある』としゃべらずに刑事事件で不起訴になり、民事でも逃げ切れるという悪い前例ができた。公務員、特に高級官僚の不正に歯止めがかからないでしょうね」と怒りをにじませ、「役人天国万歳ですよ」と痛烈に皮肉った。

 俊夫さんの死について、「私は真実が知りたい」と訴え続けてきた雅子さんだが、松丸弁護士が「何であんな判例があるのか」と話し、生越弁護士が「最高裁に正面からかみつくことになるので、裁判長にそこまでのガッツを求めるのは酷なのかもしれない」と話したように、国家賠償請求における違法行為を行った公務員の個人責任を否定した最高裁判例の壁に阻まれた形だ。

 雅子さんは「こんな形で終わるとは思わなかった。国も裁判所も思いには答えてくれなかった」と無念の思いを口にし、「こんなの許されない。4000万円を送金した話でも、それぞれに責任を感じておられると思う。佐川さんも責任を感じてほしいし、公にするべき。それをしなくて済むと公務員の人は逃げ得になる」と語った。

 なお、山口県阿武町の4630万円誤送金事件が話題となっているが、地方公務員の個人責任については「住民訴訟で個人責任を問える」(法曹関係者)という。