軍艦島をよみがえらせろ! ドイツ・ボンで開かれた国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会が、8日に「明治日本の産業革命遺産」(福岡など8県)を含む27件を新たに世界遺産一覧表に記載。注目度の高い長崎市の端島炭坑、通称・軍艦島も正式に世界遺産となった。下村博文文科相(61)は「文化庁として、しっかり保存できるようフォローアップしたい」と強調したが、軍艦島は台風の影響などであちこち穴だらけ。急ピッチで進められる復活工事を緊急リポートする。

 軍艦島では6月上旬から、世界文化遺産登録を見越した大規模な工事が長崎市によって始められた。今回の工事で対象となっているのは「護岸」の部分で、島の周囲1・2キロメートルのうち、同島の西側で工事が行われている。

「現在、工事が行われているのは、(島の南西部にある)31号棟(鉱員住宅)の前になります。昨年7月に襲来した台風8号の影響で護岸に大きな穴が開きました。すでに、その穴の部分の補修は終わっていますが、31号棟の北側にできている大穴を砂利やコンクリートを使って埋め戻しているところです。これが終わると、その北側にある映画館跡などを挟んで51号棟(鉱員住宅)の横にある護岸の補修をすることになります。これらの工事は、8月中には終わる見込みです」(長崎市総務局世界遺産推進室)

 31号棟は鉄筋コンクリート造りの6階建てで、鉱員住宅として使われた。1階部分には郵便局があった。

 数年前から、同棟北側にある「土台」部分の陥没が進んでいたが、これは、すぐ西側にある護岸に穴が開いたことが原因だった。打ち寄せる波が「土台」となっている土やコンクリートを削り取っていたのだ。そして、台風8号の影響を受けて護岸にはさらに大きな穴が開き、31号棟周りの「土台」は大きく削り取られた。

 その外観が軍艦に似ていることから軍艦島と呼ばれるようになった。建築物としては、岩礁の上に建てられた2号棟や3号棟、灯台の近くにある貯水タンクのほか、島の南部にある30号棟(1916年=大正5年に建てられた日本最古のコンクリート造りのアパート)、北部にある65号棟(報国寮)や70号棟(端島小中学校)、69号棟(端島病院)などが代表的だ。どれが欠けても「軍艦」に見えなくなるくらい重要な建築物だ。

「今回の護岸の補修は、これで終わりますが、今月から護岸の潜水調査をすることになっています。島を守るためには、まず護岸の補修をしなければなりません。どこがどのようになっているのかを把握して、今後の補修計画を策定することになります。現在、70号棟の真下の『土台』部分は、大きくえぐられているために基礎部分がむき出しになっていますが、これはそのすぐ東側にある護岸に大きな穴が開いているのが原因です。これほど大きな穴が開いていると技術的にも大変な工事となります。今すぐに手を入れられるようなものではありません」(同)

 基礎部分がむき出しになった70号棟。元島民に話を聞くと「小中学校(70号棟)の下だけでも先に埋め戻してほしい。そうしないと、本当に手遅れになる。なぜ、すぐにできないんだ」という意見が多い。

 補修工事は最大で約150億円かかるともいわれる。世界文化遺産に登録されたことで、日本はもとより世界中から観光客がドッと押し寄せるのは間違いない。一日も早く、軍艦島の名にふさわしい雄姿が見られるよう、長崎市の奮闘に期待したい。