バンカーバスターって何だ――。ウクライナのポドリャク大統領府長官顧問はロシア軍が地下施設に直接攻撃ができる特殊貫通弾(バンカーバスター)を使用したと明かした。現在、同国南東部のマリウポリで激しい戦闘が行われており、アゾフスターリ製鉄所の地下が狙われているという。

 バンカーバスターとは聞き慣れない兵器だ。軍事ジャーナリストの鍛冶俊樹氏は「通常、爆弾は建物や地表で爆発しますが、バンカーバスターはシェルターなど地下室の分厚いコンクリートをぶち抜いて、地下室内で爆発することができます」と解説した。

 第2次世界大戦のころからある兵器で、アフガニスタンの紛争やイラク戦争でも使われたとされる。「今回使われたものはそうではないでしょうが、世界では核兵器を搭載したものも開発されており、その場合、50メートルの壁でも効果があるといいます」(鍛冶氏)

 製鉄所にはウクライナの兵士たちが立てこもっていただけでなく、約1000人の住民が避難していたという。「民間人がいるのにバンカーバスターが使われたとしたらとんでもないこと」と鍛冶氏は非難する。

 さらにロシア側に有利な状況にもあった。「ウクライナにあるシェルターはソ連時代に造られたものが多い。つまり、ロシアはシェルターの場所も設計図も把握している。狙った場所は絶対に外さないということです」(同)

 狙われた製鉄所はソ連時代に建設されたといい、その地下室は要塞と呼べるほど巨大。また、ウクライナがさらに手を加えたともいう。それだけに簡単に破壊できるものではないが、攻撃が続けばどうなるか分からない。

 ウクライナ軍の部隊司令官は20日、「製鉄所には500人以上の負傷者と数百人の民間人がいる。ここに残れるのはあと数時間かもしれない」と声明を出し、救助を求めている。せめて民間人の避難が必要だ。