学校法人「森友学園」の小学校建設を巡る補助金不正事件で、詐欺罪などに問われた理事長の籠池泰典被告(69)と妻の諄子被告(65)の控訴審判決で、大阪高裁(西田真基裁判長)は18日、泰典被告に懲役5年、諄子被告に懲役2年6月を言い渡した。両被告側は即日上告した。一審では執行猶予が付いた諄子被告が実刑判決となり、二審で〝罪が重くなる〟形となったが、籠池夫妻の心は折れていない――。


 一審の大阪地裁判決は諄子被告に関し、府市の補助金詐取を無罪とし国の補助金詐取で懲役3年、執行猶予5年としていたが、二審では実刑判決が下された。西田裁判長は主文を述べた後、3時間半以上にわたって判決理由を読み上げた。

 泰典被告は公判で、小学校建設をめぐって諄子被告が発した「ぼったくる」の発言を大阪地検特捜部が意図的に改ざんしていると主張。これが証拠採用されたことで、二審での逆転無罪判決さえ信じていただけに、西田裁判長の判決理由に何度も首を振った。

 読み上げが終わると、「家内の執行猶予は?」と確認。改めて実刑判決だと説明を受けると「とんでもない人間だ」「こんな不当裁判は許せない」と不満を爆発。検察官に対しても「アンタたち、すごいな。許せない」と激怒した。

 諄子被告や傍聴席にいた2人の娘も涙ながらに「検察に取り上げられた証拠を返して」などと叫び、法廷は異様な雰囲気に。西田裁判長は傍聴人に退廷を命じて、法廷を後にした。

 閉廷後、泰典被告の代理人の南出喜久治弁護士は、2人の保釈申請と上告したことを明かした。

 泰典被告は「私たちが思っていたような判決じゃない。西田裁判長は横暴極まりない(裁判)指揮をして、検察官の主張を補強するような判決を下した。『ぼったくり』発言も証拠として採用すると言いながら何も認めなかった」と怒りは収まらない。「拘置所に入ったこともなく、ゲーム感覚なのだろう。そういう裁判官が大阪高裁にいるなんて、とんでもないことだ」と猛批判した。

 一方、諄子被告は泰典被告との共同正犯が認められ、一審で無罪とされた大阪府市の補助金詐取が有罪になり、執行猶予がなくなり実刑となった。ただ〝罪が重く〟なったのに、なぜか懲役は3年から2年6月と短くなった。

 南出弁護士は「刑期は減ってるのに執行猶予がつかない。無罪を有罪にするなら刑期も増えないとおかしいが、何の理由の説明もない。それに共同正犯を認めるというなら、泰典さんの刑期も下げないとおかしい」と量刑に疑問を呈し「この裁判は政治マター。とにかく諄子さんを実刑にしたいということだ」と、安倍晋三元首相、昭恵夫人の〝影〟を指摘した。

 籠池夫妻にとっては悪夢の1日となったが、諄子被告は「『ぼったくり』発言は村木さんと同じで改ざんです」と、2009年に起きた郵便不正事件で村木厚子さんが冤罪だったことを引き合いに地検を批判。最高裁での戦いに向け「無罪と思っているし、絶対に負けない。政府はこんなやり方をすると実例を示せて良かった。司法の改革をしてほしい」とファイティングポーズを示した。

 諄子被告は昨年の衆院選に出馬した際も、司法改革を訴えていた。泰典被告にもたびたび国政選挙への出馬が取りざたされた過去がある。

 泰典被告は今夏の参院選にチャレンジする可能性について「今の時点では全く考えていない」と否定しつつ、「国にパンチやね、夫婦で出たら。どこか言うてくれるかな」と、オファーがあればまんざらでもない様子だ。

 激動の1日を終え「裁判所 夕闇なかに たそがれて」と恒例の一句を披露したが、参院選の候補者に名を連ねる可能性はあるのか?