安倍晋三元首相(67)は11日、自民党の片山さつき参院議員が開いた「政経セミナー」で〝経済と安全保障〟について講演した。

 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻は、緊迫の度を増すばかりで収束の気配すら見えない状況が続いている。

「今回のウクライナの出来事は衝撃的です。ロシアは、国際法を踏みにじって堂々と侵略しています。その国は安保理の常任理事国だということですね。この深刻さに私たちは襟を開かなくてはならないです」と安倍氏は訴えた。

 ロシアによるウクライナ侵攻が強行されたことで、中国による台湾有事が懸念されている。仮にそうなった場合、米軍基地や自衛隊を抱える地方自治体は「攻撃対象になりかねない」と専門家は危惧している。

 安倍氏は「台湾とウクライナは似てる点があります。相手の国(中国とロシア)が、安保理の常任理事国だということです」と指摘し、こう語った。

「相手国が常任理事国だった場合は、安保理がまったく役に立たないという現実です。しかし、台湾、ウクライナには同盟国がいます。ともに戦ってくれる国は、同盟国以外はありません。ウクライナは国連に加盟している独立国です。一方、台湾は残念ながら国際社会から国として認められていません」

 中国は「台湾が自分の国の一部だ」と主張。日本、アメリカは中国のこの考え方を理解して尊重してきた。そこで今後、日本は何をすべきか。

「中国の立場(台湾への侵攻)は、国際法違反じゃないんです。自分の国の中、領土の一体性を保つため台湾に入っていきますよ、という主張がですね、国際社会でまったく通らないわけじゃない。予期せぬ衝突、戦争はどうして起こるのか。ひとつは(両国間で)バランスが大きく崩れているということ。ウクライナとロシアは、戦力が全然違う。中国と台湾も同じで、危険なんだということです。戦力の差がある場合、日本は自助努力をして、同盟国との関係を強化する。自由で開かれたインド太平洋構想で賛同する多くの国々にこの地域に軍事的にコミットすることが、日本と中国のアンバランスを直し、台湾とのバランスも抑止していくことになることだと思います」と安倍氏は力説した。