ニホンオオカミ復活を阻むのは“赤ずきんちゃん幻想”

2015年06月18日 06時00分

丸山会長は秘策を明かした

 日本にオオカミが復活する? 日本オオカミ協会が先日まで全国各地で「日・米・独 オオカミシンポジウム2015 復活と保護」と題されたイベントを開いた。すでに日本では絶滅したオオカミだが、いなくなったことでシカが増え、獣害を引き起こしている。そこで日本もオオカミを復活させようというのだ。同協会の丸山直樹会長は「赤ずきんちゃんの影響で日本人はオオカミを怖がっている」と思わぬ障害を挙げた。

 日本でオオカミが絶滅したのは明治時代の終わりごろ。乱獲や駆除でいなくなったとされる。同協会は1993年に設立され、オオカミの復活を目指して、研究や啓発を行っている。とはいえ、今なぜオオカミの復活なのか。

 丸山会長は「生態系を守り、生物多様性を回復して、獣害を軽減しようと。オオカミは日本の生態系を守り育ててきたのです」と理由を話す。オオカミは自然界において食物連鎖の上位に君臨した。その動物がいなくなったことで、シカやイノシシ、サルが増加した。

 特にシカは木の幹の皮をはいで「剥皮被害」を招く。皮をはがれた木は枯れてしまう。さらに、数が増えたことで高山帯にまで進出したシカは、高山植物を食い荒らす。猟師による駆除も追いつかない。そこでオオカミを復活させ、食物連鎖のピラミッドを正常に戻し、シカなどの数をコントロールしようというのだ。

 同協会によれば、日本にいたニホンオオカミは固有種ではなく、北半球に広く分布するハイイロオオカミと同じ種類だという。ロシアや中国からハイイロオオカミを連れてくることで、復活させることができると説く。

 理にかなっているように聞こえる話だが、なかなか進まない。丸山会長は「オオカミを猛獣と思っている人はたくさんいる。それはなぜかというと、グリム童話の赤ずきんちゃんのせいじゃないか」と、オオカミ復活の障害は赤ずきんちゃんだと指摘する。

 赤ずきんちゃんはおばあさんの家へ向かう。先回りしたオオカミがおばあさんを食べてしまい、さらに赤ずきんちゃんまで食べてしまう。結末はいくつか種類があるが、とにかくオオカミは人を襲う怖い動物として印象に残るようになった。復活を怖がる人がいるのも不思議ではない。

 どうすれば赤ずきんちゃんの呪縛を解くことができるのか。丸山会長は本紙に「赤ずきんちゃんに対抗する童話を作って、啓蒙していく」と秘策を明かした。オオカミが主人公になるそうだが、歴史ある童話に対抗するのは並大抵のことではない。しかし、丸山会長は本気である。

 オオカミ復活には人間への被害の心配もあり、国民的議論が必要。オオカミの雄姿が日本で見られるのはいつになることやら。