来年日本で開催される主要国首脳会議(サミット)の場所が三重・志摩市に決まり、関係各所が準備に入った。会議場候補のホテルはほぼ四方を海に囲まれた賢島に位置し、警備上の優位点が強調される。一方で伊勢志摩エリアは、国が高確率で大地震を予測する南海トラフ地帯のど真ん中。危機管理の点から疑問の声が出ている。

 伊勢志摩サミットについて愛知県警は14日までに、警備強化の在り方を検討する対策委員会を発足させた。志摩市は、受け入れ準備にあたる「サミット推進室」を月内にも立ち上げる。準備が着々と整っているが、開催地は大地震の危険地帯に属する。

「まさか南海トラフ地震が直撃する可能性がある伊勢志摩とは驚いた。世界の要人を招くイベントですから、より厳しくリスクを考慮すれば選べるところではない」と指摘するのは防災アナリストの金子富夫氏だ。

 静岡・駿河湾から四国南岸まで約700キロにかけての東海、東南海、南海地震が3連動する南海トラフ地震だ。国の地震調査研究推進本部は2年前、過去の統計から同トラフ領域でマグニチュード8~9クラスの地震が30年以内に発生する確率を70%、50年以内に90%と発表した。

 南海トラフ地震で、三重県は最悪ケースで震度7の揺れに襲われ、4万人以上の死者が出ると想定されている。メーン会場となる「志摩観光ホテルクラシック」がある賢島は内湾で、大津波にのみ込まれる可能性は低いものの、耐震補強・改装工事のため休館中だ。

 伊勢志摩への玄関口となる愛知・中部国際空港も南海トラフ地震では津波浸水が想定され、機能不全に陥る恐れがある。「もしサミット開催中に大地震が発生し、先進国首脳や関係者が賢島に足止めされ、死傷者が出ようものなら世界の政治経済が大混乱・停滞することにもなる」と金子氏は警鐘を鳴らした。